第4章 お祝い会
「こうなっちまってから言うのもアレだけどよ、俺なんかが副隊長やったら、迷惑かけちまうんかな…」
萌は驚いて恋次を見やった。気弱なところはほとんど見せない彼だが、先程の話が気になっているらしい。
「…試す前からそんな事言うなんて、らしくない」
すっかり気落ちしている恋次に向かって静かにそう告げると、彼は顔を上げた。
「オレ…頑張れてるよな?」
「恋次が頑張ってることはみんな知ってる。だから更木隊長も朽木隊長も受け入れてくれたんでしょ」
すがるような目を向ける彼に萌は笑顔を返した。
「あたしも知ってる。恋次が真面目に頑張ってきたこと」
「萌……ありがとよ」
恋次は少し微笑んですうっと腕を伸ばしてきた。逞しい腕にがしと肩を抱かれ、萌は彼の胸に倒れ込む。
「少しだけ、こうしてていいか…?」
「うん…」
そこへ突然、部屋の扉のノックと共に声が響いた。
「おーい恋次、いるか」
二人はびくっとして即座にお互い体を離した。ガラッと音をたてて開けた扉から中を覗くように修兵が顔を出す。
「何だいるじゃねえか…って、あれ?先客」
「ひ、檜佐木さんか…びびらせないで下さいよッ」
あたふたとした恋次の反応に、修兵はピンときたのか途端にニヤニヤし始める。
「驚き過ぎじゃね?なーにしてたンだよ」
「何もしてないっスよ!」
ムキになればなる程怪しいだけだが、恋次に感情を抑制しろと言うほうが無駄だろう。修兵は楽しそうに恋次を親指で指し、萌に笑みを向けてくる。
「気を付けたほうがいいぜ、こいつケダモノだから」
「アンタにだけは言われたくねえーー!!」
渾身の力でツッコミをしてぜえぜえと息を吐く恋次。
二人のテンポの良い掛け合いに圧倒され無言でいた萌だが、ハッと我に返りいそいそと立ち上がった。
「あたし、そろそろ…」
部屋を出ようとすると、スッと腕を壁に付いた修兵に行く手を阻まれる。
「…帰んの?」
「ちょ、檜佐木さん!」
修兵が萌に絡むのを制そうと恋次が呼び掛けるも、当人は聞く気はないようでこちらを見やったままだ。