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dearest moment

第26章 外伝


「夢野さん…」

 給湯室でスープを温める彼女に探りを入れてみた。

「九番隊に女性の知り合いっていますか?」
「ううん、任務で一緒になった人はいるけど、女の人とは機会がなくて話せてないの」

 やはり嫌がらせ…だよな。
 俺はそう確信する。

「…どうして?気になる子がいるとか?」

 冗談混じりに夢野さんが切り返してきた。小首を傾げたお茶目な姿が可愛い。

「まさか。夢野さん以外にいるわけないです」
「ごめんなさい、悪い冗談でした」
「いえ、全然気にしてませんよ」

 失言にすぐ反省して謝る彼女に俺は本心を伝えた。強がりなんかじゃない。
 乱暴に告白しても、避けることなくその後の態度を変えない彼女はそれだけでも有難いのに、小さな冗談に腹を立てる筋合いなどない。
 やはりこの人に本当の事は言えない、これも渡す事は出来ない。これを見れば、確実に自分を責めてしまうから。



◇ turbulence ◇

 翌日今度は俺が九番隊を訪ねた。風貌を説明して昨日の彼女を何とか呼び出してもらった。

「これ…」

 例の手紙を目の前に差し出す。

「渡して欲しいと言ったはずだけど」
「悪いけど、これは渡せない」
「なんで……あなたまさか、中身を見たの?」

 はっと気付いた彼女は、驚いた顔から怒りの表情に変わる。

「なんでそんな事するの?ひどい…あなた関係ないでしょう?」
「関係なくはない、俺は夢野さんが好きだから」

 俺の言葉に彼女はこちらを一層睨み据えた。

「意味わかんない…だったら尚更、副隊長から遠ざければいいでしょ!」
「そんな事するもんか。俺は彼女が悲しむ事はしたくないんだよ!好きだから!」
「…好き…だから?」

 そこで彼女は俺を小馬鹿にしたように鼻で笑う。

「そんなのは偽善よ。本心は二人が壊れればいいと思ってる」
「君と一緒にしないで欲しい。俺は思ってない」

 誰もが同じ思想ではない事は百も承知だが、こいつの考えが歪んでいる事を何とか解らせてやりたくなった。

「じゃあ夢野さんが身を引けば、君は檜佐木副隊長に選ばれるのか?」

 俺の反論に彼女は何か言いたげだったが、結局言葉を無くしたように押し黙った。











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