第9章 1割のお礼
は早く寝て、いつもより早く起きた。
辺りを見回すと、樹戸の姿はなかった。
帰ってないんだ、と思いながら布団を畳んだ。
は、ああいう人だったなと昔のことを思い出した。
出かけてくると言ってから、家に帰って来たことは1度もなかった。
それにしびれを切らした母が彼と口喧嘩をしているのも覚えている。
『……ご飯の準備しよ』
台所まで行く。
昔の事は嫌いだ。昔の事を洗い流すように、水道の蛇口を捻る。
いつも通りに敦と接することが出来たら、どれほどいいか。
は自分に出来ないと思っている。
臆病で、度胸がない自分に。
無性に泣きたくなった。
でも、泣かない。泣かないって決めたから。
溢れそうな涙をグッと堪える。
ドアが開く音がしてドアの方を見ると、樹戸が帰ってきた。
ズカズカと、自分の方に向かって来た思っていたら急に抱きしめられた。
『えっ、なに、あの、ちょっと!』
抵抗出来ないはキスされる。
激しいキスがようやく終わる。
はぁはぁ、と肩で息をしているに樹戸がぽつりと話した。
「ちゃんはまだ僕のものだよね?」
『意味分からない、からっ...』
そう言うと、彼は「分からない?」との目を見ている。
「ああ....うん、は僕のものだ。」
何言ってるの?と困惑するに彼はまたキスをして、服の中に手を入れて胸を揉む。
『やっ、待って!ダメだって....っ』
下にも手が入れられて、ナカに指が1本入れられる。
『ひゃあっ、ぁっ、んんっ』
「はは、あの時の反応とそっくりだ。懐かしいね」
あの時というのは、2年前のあの夜の事だろうか。
もうのいい所は知っている。彼の指はそこばかり当たっている。
『あ"、イッ...んんっ...ぁあ!や、イッちゃ、ッ〜〜〜〜!!』
ビクッと大きく身体が弓なりになった。
「イッたね、すごく可愛い」
また彼はを抱きしめた。は疲れた身体を彼に委ねた。
少し首の辺りが痛く感じたが、今はそんな事どうでも良かった。
微かにアルコールの匂いがした。
昨日の夜は飲みに行ったんだろう。