第8章 夢見るために
それから仕事が終わり、は寮へと帰宅する。
鍵をカバンから取り出して、鍵穴にさして回すと、違和感を感じた。
『開いてる...?』
どうして開いてるの?と思いながらそのままドアを開ける。
空き巣に狙われた?
下に目線を落とすと、人の靴があった。
恐る恐る前に進むと、人影が見えた。その人影は知っている人のものだった。
『樹戸さん...』
「やあ、仕事からの帰りかい?」
彼は、たくさんのノートを広げていた。
『な、なんでここに...』
「ダメだよ、一人で帰ったら」
話が噛み合わなかった。
ダメ、というのは
昨日勝手にいなくなり、彼を1人置いていって他の人の所に行ったそのダメか、夜遅くまで働いて歩きで寮にへと帰っていることか。
その事が頭に浮かんだが、そんな事はどうでも良くなった。
『か、関係ない、です...帰って...』
自分でも声が震えているのが分かる。
「長期出張になったんだ。これからはちゃんを迎えにいくよ。独りで夜に出歩くのは危険だからね」
彼は立ち上がっての方へと近寄る。
『来ないで...!』
後ろへ下がろうとするが、足が震えて動かない。
彼はの頬を手を添え撫でる。
「男の匂いがする。こんな夜遅くまで男に奉仕したのかい?」
『違う!そんなことしない!仕事で一緒になってるだけで...っ』
「震えているのかい?可哀想に....こっちに来て。
一緒に温まろう」
樹戸ほ手は頬から手首に下がる。
はその手を振り払った。
「どうしたんだい」
『もう関わらないって、決めっ...』
樹戸がの話を遮った。
の後頭部を押さえて、舌を絡ませる口付けをした。
長くて、苦しい。
やっと終わると、樹戸はこう言った。
「いつからそんな子になったの」
『わ、私はっ、貴方に、縛られたくない』
はそう言うと、沈黙が続いた。
「そんな事言ったってちゃんは、僕とするの好きでしょう」