第8章 夢見るために
ぱちり、とは瞼を開けた。
「あれ、もう起きた?」
太宰の言葉で恵美は気付く。
『ここ...』
──太宰さんの部屋?
自身には布団が被されている。
「私の部屋だよ。ちゃんぐったりしてたから此処まで運んだんだよ」
『あれから...?』
「覚えてないのかい?」
太宰はニヤつきながら答える。
「1回シて、それからは数えきれないほどしたんだけどなぁ...本当に覚えてない?」
は思い出すように、視線を上に向けた。
『......。何言ってッ!?』
確かに1回したのは覚えている。
だが、それ以降のことは覚えてない。
『そんなにしてな、い...はず...』
「じゃあ、今からするかい?」
太宰は近寄り、キスが出来る程まで近づいた。
『ぃ、いや、あ、う...その、今何時ですか?』
「ああ、時間?今は...」
太宰が時計を見た隙に、は離れる。
「7時だね、夜の」
『えっ』
どうしよう、とは不安になった。
樹戸の事もあるし、何より一番大事な探偵社に戻ることをしてない。
『探偵社...戻らないと...っ』
布団から出て、は玄関に向かおうとするが、太宰に止められる。
「今から戻ったって誰も残っていないよ。明日顔出せば大丈夫さ」
『でも...樹戸さんの事もある...』
「ちゃん、君はあの人にもう縛られなくていい。ちゃんだってそれは嫌だろう?」
『......』
は黙った。そして、一つ疑問が浮かび上がる。
『なんで私こんな時間まで寝てたんだろ…』
「きっと疲れてたんだよ。だから、まだ寝てて」
ここ一週間の事を思い出した。確かに疲れてるんだな、と思った。
布団に戻ろうとしない に太宰は声をかける。
「一緒に寝るかい?」
は驚いたが、ゆっくり小さく頷いた。