第6章 気持ち
例の事件は、探偵社や警察の調査を嘲笑うかのように続いている。そして、ある日太宰はを呼んだ。
呼ばれる意味を知らないは困惑する。
『なんですか、話って...』
「そう、聞きたいことは今起こっている事件に関してだけどね」
はい、と言い頷く 。
「ちゃんはこの事件の犯人を知っているのじゃあないかい?」
その言葉を聞いて、は目を見開いた。
『知って...ないです』
視線は太宰から外れ、足元に落ちた。
いつの間にか、は左腕を押さえ握っていた。
きっと太宰はこう言いたいのだろうと、は思った。
───この事件の犯人は君の父親だろう、と。
でも、そんなこと確信して言えない。
は太宰に薄々気づかれていると思っていたからだ。
「大丈夫かい?」
微かに震えているに声を掛けた。
───何もかも見抜かしているようなその目が嫌いなんだ。
今の状況には合わない事を思った。
は恥ずかしいような気持ちで一杯だった。
「腕どうしたんだい?」
何でも無い、と言う様には首を横に振った。
「見せてみ給え」
太宰は腕を掴んで袖を捲りあげた。