第11章 憂愁
出来ることなら、敦だけに触れられたい。触れていいのは大好きな敦だけで、自分のまわりの男は敦だけで十分。
そう思うがそんなこと言ったり、してもらったりする資格が自分には無い。
自分はそんなことが許されない人間だ。
あの時敦は「綺麗だよ」と言ってくれたが、自信が無い。更に汚くなった。
自分の穢れている身体を触らす事なんて出来ない。
そう思い始めたのも最近。
考えたくなかったが、ふとした時に考えてしまう。
そんなこと思った時はだいたい病んでしまって、夜に泣いてしまったことが何度かあった。
今もうっすらと涙が出てしまって、グッと抑える。
その時着信音が鳴った。
着信音はの携帯電話から鳴っている。
慌てて携帯電話を取り出して見てみると、画面に【おさむさん♡】とかかれていて驚いた。
『太宰さん……?』
一瞬あれ?と思った。太宰と連絡先交換した覚えはない。
が知らないうちに、太宰は自分の電話番号を登録していたのだ。
しかも名前で登録されている。おまけに名前の最後にハートの文字が付いていて、とても趣味が悪い。
これは絶対太宰の仕業だ。
異性を苗字ではなく下の名前で呼んでいるのは敦だけだ。敦以外異性を名前で呼ばない。きっとこれからも。
登録されていたの本当に全然気付かなかった。いつの間に。
そう思いながら画面を見ていると「出ないの?」と敦に言われてハッとした。
もう既に5コール以上している。