第1章 拝啓赤き月へ
「いや、死なねーよ。お前らのせいでウチはストレスで死にそうなんだよ」
「すみません。ならばボクがお肩をおもみしますから!さあさあ座ってください」
ベッドサイドに座るよう促し、黒猫は天月の後ろにきて前足をおき、ぽんぽんと叩いているが天月の着物にシワがより、口元には苦い笑みを張り付かせていた。
「どっどうでしょうか?天月さま!」
よいしょよいしょと揉んでいるのか叩いているのかわからないが、一生懸命肩をほぐそうとする姿に怒れなくなったのかクスリと笑みをこぼす。
「あ……っ、ようやく笑ってくれました。天月さまは笑っている方が素敵ですよ」
えへへと笑ってみせる猫。
「そりゃどうも」
「……お風呂先いただきました」
足音がすぐ横で止まり、ちらりと見やる。
「あ、私、吉田葵です」
目の前に握手を求める手が差し出された。その手を握り返し名を告げた。
「相良天月です。宜しく」
「…………天月?こっこちらこそよろしくね」
一瞬何かを考えかけるがにこりと微笑む。
「あの、一緒に学院長を探しに行きませんか?」
「え、いや、ウチは大丈夫。ここにいる」
「そうですか?わかりました」
そう一言いって葵は部屋を出る。
学院長の顔が隠れているのにわかるのだろうか? そんな事を思いながら気を探るために目を閉じた。
何故こんな事に巻き込まれなければいけないのか。
何か1つ解決すれば、また変な問題ごとに巻き込まれる。
本当になんで! もしかして、そういうルールな訳? 虐め?新たな虐め? もしくは詐欺ですか。え、そんなにウチ嫌われてんの。酷くない? いや、だからと言って好かれてるのかと言われれば違うけど……、そうですかそうですか、そんなにウチの事が嫌いですか!これって泣くとこなの?これは泣くへき?
心の中で愚痴っていると、ドアをノックする音が聞こえた。
「…………」
おそるおそるドアを開けるとそこには、青髪の顔の整った男性がいた。
「うげっ!」
「………おい、付いて来い」
「え、ちょっどこに?!」
「はあ……、お前は馬鹿なのか」
「え、いきなり馬鹿ですか」
呆れたというように長く重い溜息を吐いた後、一瞥してくる。
「取り敢えず付いて来い」
「……はあ」