第1章 拝啓赤き月へ
「あれ、学院長笑ってない?」
「え、そうでしょうか?」
「ほら見て、肩震わせてる」
「は、もしかしたら葵さんが重いのでは……」
「多分それは違うんじゃない」
リンととロイは議論しあい、フェンは楽しそうに笑う。
「なーんか面白くなりそうだよね」
「チッ、めんどくなりそうだ」
4人が話し合っている間、相良と赤い瞳の青年は静かににらみ合っていた。
「おいお前………いつまで見ているつもりだ。視線を剃らせ」
「見てないですー、睨んでるんですー、お前が先に逸らしたらやめてやるよ」
「なんだと??」
「ほらほら、行きますよ」
学院長は火花を散らしている2人の目の前で手を振る。
ひらひらと手を振られ鬱陶しいと2人同時に学院長を見る。
「おい、てめえ、これはどういうことだ」
「ふむ。それは私にもわかりません。ここでやっていくしかないでしょう。付いて来なさい。ほら、あなたたちも」
相良は悔しげに歯をくいしばる。
部屋に入る際、学院長に木刀と刀を腰元から抜き取られたことには、少しばかり驚いた。
「ああ、これは預からせて……いただきますね」
優しく微笑まれ視線を逸らした。
「勝手にどうぞ」
何も抵抗しませんと両手を上げるその姿に一瞬目を見開いた学院長は、意外と言いたげに視線をよこしてきた。
「ウチは諦めは早い方だから。ここはあんたらのテリトリーだ、なるべくルールは守るつもりだ」
「それはそれは。賢い選択だと思いますよ」
学院長は葵をベットに横たえさせ、まるで生徒が正解を導き出したかのように褒める。
「…………」
少し目を離した隙に学院長はすぐ目の前まで来ていて、より警戒を強めていると右手が上がりポンっと頭にのる。
「………え?!」
「……大丈夫ですよ」
そして優しく撫でられた。