第2章 美しい嘘つき
「それではこれから、初級魔法の講義を行います。おや……?」
ロイが出欠の確認を取ろうとした瞬間、突然開いたドアに教室内がざわついた。横柄な足取りで近づいて来た赤い瞳の男性は、葵の横に座っていたリオをどかし、葵の横に座る。
「あ、天月さーん」
天月は今だにそっぽを向き、関わりたくないというオーラを出していた。ついにガイの睨みに耐え切れなくなったのか、服の裾を引っ張る葵に肩をハネラスが、それ以降なんの反応も示さないように耐える。
ロイが出席を取るうちも、助けを求めていた。
「吉田葵さん」
「は、はい!」
「相良天月さん」
「……はい」
出席が終わると、自分たちの目の前に透明な液体の入ったグラスが置かれる。
葵は飛んできたグラスに驚くが、魔法で浮かせたのかと思ったのか苦笑いに変わる。
「ガイ様が隣に座って話しかけた」
「あの転入生、一体何者」
また女子たちがざわざわとし始める。
「兄上」
前の男子生徒がガイに話しかけている。兄上と言っているのでおそらく兄弟なのだろう。やはり弟には優しいのだろうか。
「……うるさい」
思わずガイを見る。
「おい、そんな風に言わなくてもいいだろ。兄弟なんだから仲良くしろよ」
「何!」
「天月さんいいんです。兄上すみません」
しょんぼりと肩を落とすアキアを見る。その背中は寂しそうだ。
「……なんだよそれ」
講義も終わりアキアに話しかける。
「君の兄ちゃんいつもあんな感じなの」
「ええ、そうですね」
「そっか」
ガイの出て行ったドアを見ると、アキアに「次の授業が始まるから行きましょう」と言われた。
次の授業の場所は何故か剣道場、みんなは竹刀を構えていて今から試合をやるらしい。
「じゃあ、初めは男子からな」
顧問の先生が指示を出す。
天月は座りながらぼーっと試合を見る。不意に横を見ると葵と目が合った。
「何」
「あ、ごめん。天月さんって侍だから、この授業つまらないんだろうなあって思って」
「別に」
「なあ、侍ってなんだ?」
横にいたせいかリオに聴こえていたらしい。天月は軽く葵を睨む。
「えーっと、侍って言うのはいわゆる武士でその」
「なんでもない。あんたらにはわからないよ」
「ふーん、そうなのか」
リオは明るく答えた。