第2章 美しい嘘つき
休み時間、女子生徒たちの声が漏れ聞こえる。
「あたし昨日、フェン様とお話ししたのよ」
「フェン様は、本当に魅力的ですものね」
女子生徒はうっとりと溜め息を溢すが、天月はそれを鬱陶しそうに見る。
隣に座った葵がこそこそと話しかけてきた。
「最初の教室でも思ったけど、大学みたいだね」
ニコリと笑いかける葵に素っ気なく答える。
「ウチ大学行ってないから」
「あ、そうかそうだよね。ごめん」
少し悲しそうな笑みに変わった。
この教室は階段教室なので、必然に強台を見下ろす形になる。
「もう待ち切れないわ」
聞こえた興奮気味の声は、ぎゅうぎゅうに埋まった前方の席からだった。女子生徒たちは、目をキラキラと輝かせまだ談笑中だ。男性はばらけて座っている。
「初級魔法の講義って、女の子たちのやるきがあるんですか」
「ああ、やる気って言うか、教える講師が……」
リオの言葉の途中でドアが開きすらっと背の高い男性が入ってきた。
「あの人」
「……」
「みなさん、おはようございます」
女子生徒たちは、一斉に挨拶を返す。
葵は目を瞬かせる。
「ふふ。初級魔法のクラスは今日も元気ですね」
「あの人も講師なんですか」
リオにこそっと耳打ちする。
「ロイ・レビアって言うんだ。ロイはs.ランク生だからな。生徒として受ける時間が少ない代わりに、Aランク以下に教えることで魔力の腕を磨いているんだ。あとロイは、モデア国の王子なんだぞ」
「また王子様か」
「ん? なんか言ったか天月」
「……別に
彼はゆったりとした足取りで教団の前に立ち、優雅な所作で襟元を正して笑みを深める。
天月はそっぽを向き、葵はロイと目が合ってしまったようだ。そして軽く手を振る。すると途端に女子生徒たちが、こちらを振り向く。
「なによあの子昨日から」
「ありえませんわ」
リオはロイに手を振り返す。
葵を助けたのか、それとも自分に手を振ったのかと思ったのか。
「あら、リオ様に手を振ったのね。王子様同士で仲がよろしくて、羨ましいわ」
「な、これで女子生徒が前占領する理由わかるだろ?」
「はい、あの今王子様同士って聞こえたんだけど」
「おう。オレもルゼルの王子だからなあ。あ、でも、普通にしててくれよな、ルゼルではみんなそうだから」
「う、うん。わかった」