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ちょっと過保護すぎるんだけど?

第2章 2


川島が食事の支度に取りかかろうとしたところで、お嬢様がキッチンへやってきた。

手伝いたいという。
といっても、手伝ってもらうことなど何もない。

お嬢様には包丁は持たせられないし、というか刃物はすべてダメだ。

美しい指に傷でもついたら大変だ。
かといって水仕事もさせたくない。
となると手伝うことは限られてくる。

だが、せっかくのお嬢様の厚意を無にするわけにもいかない。

「ありがとうございます。それでは、今から言うお野菜とお魚を冷蔵庫から出してください。今夜のメインは白身魚のフライです。和風に仕上げます」

「わかった!」

川島は、嬉しそうに返事をするお嬢様を愛らしく思った。腕まくりをし、エプロンまでつけてはりきっている。

出された野菜と魚の下処理をしていく。
小気味よいまな板の音がキッチンに響くなか、お嬢様が言った。

「川島、つまんない。わたしも野菜切るの手伝っていい?」

「いけません!」

川島は手をとめ反射的に答えた。

「だってふたりでやった方が早いよ。作業台も広いんだし」

「危ないですから絶対にダメです」

真顔で反対する川島に驚いた顔をしながらも、お嬢様もまだ引きさがらない。

「じゃあピーラー貸して。皮むくから」

ピーラーも危険だ。
家の中にあるすべての刃物は常に研ぎ澄ませてある。

包丁やハサミの類を研ぐのは、川島にとって精神を統一するための大切な時間でもあった。

紙がスッと切れるほど研ぎあげた刃の冷たい光をながめていると、自分の心も同じように研ぎ澄まされた感覚になる。

それほどまでに切れ味の鋭い刃物を、お嬢様には絶対に持たせるわけにはいかない。

川島は断固として反対した。

「ダメと言ったらダメです」

「じゃあ大根おろすから、おろし金とって」

おろし金などもっての他だった。ピアノを弾くお嬢様の指が、万一おろされてしまったらどうするのか。

「それもいけません」

お嬢様の声が固くなる。

「もういい。こっちでアク抜きするから」

水を出そうと伸ばされた手を、川島はあわてて掴んで止めた。


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