第12章 Tシャツ裏事情
楽しみな事があると、時間が過ぎるのが遅く感じるものだ。
ソワソワとお昼休憩を楽しみにしながら、午前中の授業を何とか終える。
お日様が高い位置に登ってきた頃、漸くのお昼休憩だ。
今回も、前回同様中庭で西谷先輩と過ごすことになった。
相変わらず、購買に出来た人だかりにピョンと突っ込んで、何事も無く出てくる西谷先輩。
難なくプリンとパンの入った袋を下げてこちらにやって来た先輩と2人でベンチへと移動した。
今日も空は青く澄んでいて、春にしては少し風も弱い。
心地よく吹く風に髪が靡くのを感じながら、お弁当を食べ終えて、西谷先輩に買って貰ったプリンに手を付ける。
相変わらずとっても美味しい。
プリンを食べながら、隣でまだ焼きそばパンを頬張る西谷先輩を見る。今日のTシャツの四文字熟語は大器晩成。
大きな才能は、完成するまで時間がかかるということ。
これからの可能性を感じる素敵な言葉だ。
ところで、このTシャツはどうやって手に入れているのだろうか?
春高で売っているエースの心得Tシャツのように、大会で売っていたりするのだろうか。
ちなみに私は去年、東京代表で親しくしている梟谷高校の応援をしにクロちゃんと研摩と一緒に春高を見に行った際、エースの心得Tシャツを買ってしまっている。梟谷のエースとお揃いなのだ。
じーっとTシャツを見つめていると、ふと目の前の体が揺れる。
目に入ってきたのは、屈んでこちらを見つめる西谷先輩。
「そんなに俺のこと見てどうした?何か付いてるか?」
『あ、ごめんなさい。Tシャツがちょっと気になって。』
「これか?カッコイイだろ!!四文字熟語好きなんだよ!」
『大会か何かで買ったんですか?』
「いや、これなは俺の行きつけの店で作って貰ってんだ。も興味あるのか?」
まさかまさか作って貰っていたとは。
どこかで購入したとばかり思っていたのに。
『はいっ、とても!』
「さすが。目の付け所が違うぜ。」
西谷先輩が、食べ終わった焼きそばパンの袋をクシャっと握り潰した。
「今、龍と一緒に部員の分のTシャツを作ろうって丁度話してたんだ。の分も一緒に作ってやるよ!」
『本当ですかっ?』
「おう!!」