第10章 烏野の守護神
「·····。」
西谷先輩は、私の頭を撫でていた手を移動させて今度は私の両肩をガシッと掴んだ。
「·····こん·····やる·····。」
『え?·····西谷先輩?』
「今度、ミルクプリン奢ってやる!!」
『本当ですか?』
「2個奢ってやる!!なんたって俺は頼りになる先輩だからな!!」
『ははっ、ありがとうございます。西谷先輩。』
こうして、その日のうちから西谷先輩は日向くんと蛍のレシーブ練習に付き合ってくれることになった。
スガ先輩と澤村先輩は、西谷先輩が戻ってきたことに驚いていた。
サッと行ってスっとやってポンだよ。と、レシーブを教えている西谷先輩は、何だか少し影山くんの説明に似ていた。
影山くんも、グワッとか、ガーッとかいう説明の仕方をする。
ポカンとしている日向くんと蛍を見つめながら、西谷先輩がこうして練習に参加してくれているのを有難いと感じていた。
アサヒさん、という先輩がどういう人なのかわからない。
事情を知らない私が、どうこうすることも出来ない。
動きようの無いもどかしさに、なんとなく胸がモヤモヤするものの、こういう時はいつも目の前のことからコツコツ片付けようと思い直す。
『蛍、どう?レシーブ上達しそう?』
「·····あれじゃわかんないから。」
『そう?私は何となくわかるよ。』
「なに、も本能で動く系なわけ?」
『んー、それはわからないけどー。蛍っ···ちょっと私にボール出してみて!』
「別にいいけど。」
蛍に軽くボールを打ち下ろして貰う。
私も、クロちゃんと研磨が練習してた時に一緒にバレーの真似事ぐらいはしていたことがある。手の構え方は知っているし、レシーブだって出来る····はず。
『サッと行って·····スっとやって·····ポンっ。····ほら!!』
「おぉ!!うめぇじゃねぇか!あーやるんだよ!」
「·····信じらんない。」
蛍が驚いた顔をしている。
『ははっ!蛍、驚いてる。』
「レシーブもだけど、本当に西谷さんの説明でわかったことに驚いてる。」
「おい!!」
『あははっ。』
こうして、その日の部活は賑やかに終わっていった。
願わくばこのまま、穏やかに皆で部活が出来たらいいと、そう思いながら。