第10章 烏野の守護神
明くる日、今日も西谷先輩は練習に参加してくれるだろうかと心配する私を他所に、先輩は私よりも早く体育館に到着して日向くんたちと練習を開始していた。
潔子先輩とドリンクやタオルを準備して体育館に戻ってくると、その間にメンバーは勢揃いしていて、アップも終わりレシーブの練習をしていた。体育館を包む皆の熱気が眩しい。
ボール出しのお手伝いをしようと近づくと、ちょうど西谷先輩がレシーブするところだった。
「んローリングサンダー!!!」
『!!!』
「普通の回転レシーブじゃねぇか!”サンダー”どこいった!?」
「何で叫んだんですか?」
「何·····今の·····。」
「コラー。変な事叫びながら動くんじゃないよ危ないよー。」
西谷先輩のレシーブを見て、口々に笑う先輩達と、影山くんに蛍。
皆何故わらっているんだろう。研磨がやっていたゲームの必殺技みたいでかっこいいのに。
『ローリングサンダー。』
「···何、。」
『必殺技みたいでかっこいいっ。ね、蛍、かっこいいよね!』
「は?」
『かっこいいです、西谷先輩っ。』
「はわかってくれるか!?」
西谷先輩が私の頭をワシャワシャ撫でる。
隣にいた蛍から、訝しげな視線を感じるけれども何故だろう。
かっこいいじゃないか。
「·····ってさ。」
『ん?』
「ちょっと変わってるよね。」
『っそんなことないよ。』
ぷくっと頬を膨らませると、蛍に指でぷすっと突つかれた。
口に入っていた空気がプシュと間抜けな音を立てて抜ける。
西谷先輩が練習に参加してから、体育館がとても賑やかだ。とても良い雰囲気の中練習が出来ていることを嬉しく思いつつ、またレシーブの練習を再開させようとした時だった。
ガラッと音を立てて体育館の扉が開いた。
おつかれさまーという声と共に入ってきたのは、顧問の武田先生だ。
澤村先輩の合図で武田先生の元に集まる。
例に漏れず私も武田先生の元へと移動した。
早速話し始めた先生の話を聞くと、どうやら毎年恒例になっているというGWの練習合宿のことらしい。
そして、その練習合宿の最終日に練習試合を取り付けたというのだ。