第9章 練習試合 対青葉城西戦
案の定、日向くんの緊張は少しも解れていなかったようで、澤村先輩に来たボールも取りに来てしまうし、田中先輩にぶつかってしまっている。
そんな様子の日向くんをハラハラした気持ちで見守りながらも試合全体に目を向けると、何となく青葉城西のチームに違和感を感じた。
県内ベスト4なだけあって、全体的に守備と攻撃のバランスもいいし個々の技術のレベルも高い。エーススパイカー等がいるタイプの攻撃的なチームというよりも、音駒と同じようにレシーブで繋いだりチームプレイが優秀なように思える。
でも、県内ベスト4でこれとは何となく腑に落ちない。
もちろんレベルは高いと思う。でも決定打が足りないような。
あのウイングスパイカーの岩泉さんなんかは、もう少し高く飛べるような気がするし、個々のレベルは高いのに、何となくその全てを生かしきれていないような違和感。これは何だろう。
その違和感はわからないけれど、取り敢えずこの情報をメモしておかなければ。
ポケットに入れて置いた真新しいメモ帳を取り出そうとズボンのポケットを探る。
『あれ?』
右のポケットにない。
左のポケットにもない。
すぐに取り出せるようにと、バスの中でカバンからメモ帳を取り出してポケットに移したはずなのにどのポケットにもメモ帳が入っていない。
バスの中に落としてきてしまったのだろうか。
「ちゃん、どうしたの?」
わたわたと慌てていた私を見て潔子先輩がこちらに問いかけて来た。
『メモ帳が見当たらなくて。バスの中に置いてきちゃったみたいです。』
潔子先輩が、スコアも烏野メンバーの様子も記録してくれている。
でも、私も少しでも青葉城西の情報をメモしておきたい。
『潔子先輩、すぐ戻りますので少しバスに行ってきます。』
「え?大丈夫?私も着いていこうか?」
『いえっ。大丈夫です。潔子先輩は得点カウントしないといけないですし、1人で行けます。ちゃんとバスの場所も覚えていますからっ。』
「ほんとに?大丈夫?」
『大丈夫ですっ。』
何とか潔子先輩に許可を貰って、武田先生にバスに忘れ物をした事を告げて鍵を受け取る。
急いで行かなくては。
私は走って体育館を後にした。