第8章 緊張を解すには?
『ふはひぇんふぁい。』
「ははっ。」
頬を摘まれているせいで、上手に発音出来ない。
それにしても、本当に心の強いひと。
「よし、んじゃ、頑張んべ!」
そう言って、私にタオルを預け頭をポンポンすると、スガ先輩は練習に戻っていった。
わかっている。
皆それぞれ、きっと強い思いを抱いてバレーボールをしている。
楽しいことばっかりじゃない。きっと辛いことの方が多い。
練習はきついし、しんどい。それでも、その先に何かがあると皆信じている。自分には出来ると信じている。
そして、眩しい程のその思いを私は少しでも守りたい。
目の前のコートを横切りながら、また人という字を飲み込んだ日向くんを見送りながら、やっぱり緊張を解すツボなるものを明日までによく調べておこうと目下の目的を決めた。
やれることから、コツコツと。
私はこっそり手のひらをぎゅっと握った。