第8章 緊張を解すには?
部活を終えて家に帰ると、お母さんもお父さんも家にはいなかった。そろそろ仕事が落ち着くと言っていたから、もうすぐで今までよりも1人の時間は減りそうだ。
側に研磨とクロちゃんがいないのは、どうしてもやっぱり寂しい。
こういう時にはいつも側にいてくれたから。
暗い家に帰って、リビングに明かりをつける。
いつものテーブルの上には、用意してくれた晩御飯といつものメモ。
そこに目を通すと、お客さんからレモンを沢山貰ったから好きに使っていいと書いてある。キッチンに移動して明かりをつけると、ダンボール箱に入ったレモンが沢山。
『凄い、たくさん。』
これを1家庭で消費するのは大変そうな気がする。
ジャムにするにしても、量が量だ。
と、ここで思いついた。
はちみつレモンに、して、明日の練習試合に持っていこう。
はちみつレモンには、疲労効果やリラックス効果がある。スポーツにはもってこいの食べ物だ。
そう思い立って、戸棚の蜂蜜を確認する。
うーん。あまり残っていない。
時計を確認すると、まだ18時半。ご飯を急いで食べて、すぐ近くのスーパーまで買いに行こう。
外は暗いけれど、遅い時間でもないし大丈夫。
ご飯をすぐに食べ終えて、すぐ側にあったカーディガンを羽織って外に出る。
やっぱり、こっちに引っ越してきてから思う。空が澄んでいるのか上を見上げると星がよく見える。
門を出て、スーパーに向かうには蛍の家の前を通り過ぎる。
ちょうど、歩いて蛍の家の門の前を通り過ぎて少し歩いた所で、後ろからガチャっという音が聞こえた。
『あ、蛍?』
「?」
『凄い、偶然だね。蛍もお出かけ?』
「いや、回覧板、の家に。」
振り返ると、驚いた顔でこちらを見ている蛍がいた。
『ありがとう、貰っておくね。』
蛍から回覧板を受け取って、取り敢えず郵便受けに入れておく。
あとで家に帰った時に忘れずに家に入れよう。
「え、出掛けるの?今から?」
『うん。すぐそこのスーパーまで。』
「1人で?」
『うん。今家に1人だから。』
少しの間の後、蛍がはぁーーーっと長い溜め息を吐いた。
何か、してしまっただろうか。
『蛍?』
「ちょっと待ってて、すぐ戻るから。」
蛍はそう言うと、さっと家に戻っていった。