第8章 緊張を解すには?
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お昼休みの電話の後、午後の授業を終えていつも通り蛍達と部活へと向かった。校舎から部室棟へと向かう為に外に出ると、綺麗に晴れた青い空と春らしい心地好い陽気が体を包む。
入学した時はまだ寒かったけれど、東北地方とはいえもう大分温かくなってきた。
蛍達と部室棟の前で別れてから、何となく授業で固まってしまった体が気になってうーんと両手を上に上げて伸びる。
視線を上に上げると、ちょうど2階にあるバレー部の部室から日向くんが出てきた。相変わらず顔色が悪い。蛍達とすれ違ったけれど、何だかいつもと様子が違う。いつもなら蛍がからかって、日向くんも言い返したりするんだけれどもそんな様子もなくすれ違ったようだった。
『日向くん!』
「あ、さん。」
階段を降りて近づいてきた日向くん。
近くで見ると、本当に凄い顔色だ。日向くんはちゃんと寝れているのだろうか、ご飯も食べれているのだろうか?
『日向くん、大丈夫?』
「あ、うん、大丈夫。ちょっと緊張してるだけ。」
そう言って日向くん自分の後ろ頭を撫でた。
笑っているつもりなのだろうけれど、いつもの太陽のような笑顔ではなく引きつっているのが見て取れる。
ふと、日向くんの目から視線をそらして足元を見ると着ている烏野ジャージのズボンのサイズが合っていないような。
足首の方で布が余ってしまってダボダボしている。
『日向くん、そのジャージって·····。』
「日向!!それ俺のジャージだよ!!」
「あ。」
突然上から聞こえた声に、声のした方を見上げるとパンツ姿でズボンを履いていない田中先輩が。
目が合ってしまったけれど、取り敢えず慌てて両手で目を塞ぐ。
研磨とか、クロちゃんのパンツ姿は実は見た事がある。
随分前のことだけれど。
あぁ、でも何かこう恥ずかしい。
顔に熱が集まるのが分かって余計にどうすればいいのか分からなくなる。
「うあ!!ちゃん!?ごめん!!」
『だ、大丈夫です、田中先輩っ。見てませんからっ。大丈夫です。』
バタバタと上の方で音がする。
田中先輩が部室に戻ったのだろうか。
そろーっと指の間から目を出してさっきまで田中先輩のいた所を見てみるとやっぱりいなくなっていた。
ついでに、目の前にいた日向くんも目の前から消えていた。