第8章 緊張を解すには?
side 孤爪研磨
「山本、やったなお前。」
「やってくれたね、虎。」
のまたねの後に聞こえた機械音。
それと同時に、全員の視線が虎に向いた。
クロと俺の言葉に、虎はポカンとしてる。
なんでわかんないのこいつ、ほんとバカ。
「な、何すか黒尾さん!研磨まで。」
「これは、擁護のしようがないな。」
「え!!海さんまで!?」
「お前!バカ!!ちゃん、男子バレー部のマネやるって聞いただろーが!わかんねーのか!」
「え!夜久さんも!?えー··········あ!!!!!」
やっと気付いたの?
は男子バレー部のマネージャーなんだから、同じバレー部の子なんて、男に決まってるじゃん。
手のツボなんて、そんなの教えたらがそいつの手、握ることになるし。
察してた夜久さんも海さんも、当たり障りのないこと言ってたのに。台無し。
やっと気付いて冷や汗ダラダラ流してる虎。
「ちょ、研磨、顔怖。そんな表情豊かだったっけ?」
「研磨はのことに関しては見境ねーぞ。」
「それはクロもでしょ。」
「あー、まぁ、それもそうだな。ってことでー、山本今日の練習メニュー倍な。」
「ああぁーー!!すんませんっしたァーー!!」
「うるせぇ!!3倍にするぞ!!」
3倍でも足りないし。
が見知らぬ男の手を握るなんて、本当最悪。
ただでさえ、離れてるせいでずっとモヤモヤしてるのに。
食べてたパンの袋をムシャクシャした気持ちのまま丸めてゴミ箱に入れに行く。近くまで来て放り投げれば綺麗に中に吸い込まれていった。いつもなら何となくスカッとした気持ちになるけど、今は全然気持ちが晴れない。
全部虎のせい。
クロたちの元に戻ってきがてら、虎の頭をバシッとはたいた。
びっくりした虎の顔。いつもはこんなことしないからね。
でもが関わると別。許せない。
まぁ、唯一の救いはが嬉しそうにしてたことだけ。
今回の相談で思ったけど、宮城に行っても、やっぱり今までのあの優しさは変わってないみたい。
やっぱりモヤモヤする。
その優しさが、俺にだけ向いてたらいいのに。
ムシャクシャした気持ちのまま、おれはお昼休みを終えた。