第2章 入学式
校門を出て、家までの道のりを歩く。
周りにちらほらいた同じ学校の生徒も道を進むごとに少なくなって、気づけば同じ道を歩いているのは私と、月島くんと、山口くん。
その山口くんも、この曲がり角でお別れらしい。
「じゃあ、また明日ね!ツッキー!さん!」
「ん。」
『また明日ね。』
元気に手を振って、背中を向けた山口くん。
鞄を背負い直して歩いていった。
私と、月島くん。
どちらともなくまた歩き出す。
朝方は少し寒かったけれど、日も高くなった今は日差しが当たって暖かい。
遠くに聞こえる鳥の声と、僅かに吹く春の風が髪を撫でていくのが心地いい。
こんな穏やかな気持ちで帰り道を歩くことになるなんて、朝の私は思いもしなかった。
そういえば、こうして一緒に歩いている月島くんは、私の歩幅に合わせてくれているみたい。
だって、小さい私と、とっても大きい月島くんの足の長さじゃ、きっと歩く速度は全然違う筈。
それなのにこうして、春の陽気を感じながらゆっくり歩けるなんて、月島くんが私の歩幅と速度に合わせてくれているからだ。
それに、学校を出てから車道側はずっと月島くんだ。
何だかくすぐったい気持ち。
『月島くん、ありがとう。』
「なにが?」
『ふふっ。ないしょ。』
「なにそれ。」
月島くんは、ありがとうの理由、わかっているのかいないのか。
こちらをチラリと見てからまた前を見た。
歩く速度は変わらない。
なんとなく、わかっている気がする。
だって、何となく頬が桃色に染まっている気がするから。
それを見てまた、くすぐったいような気持ちになった。