第2章 入学式
3人揃って、バレー部顧問の武田先生に入部希望用紙を提出して、職員室を後にする。
顧問の武田先生も、今年からバレー部の顧問になったということだった。「僕と同じ烏野高校バレー部1年生ですね!よろしくお願いします!」とにこやかに笑った先生は穏やかながらもやる気に満ち満ちていて、こちらまで感化されてしまうよう。
月島くんに山口くん。
これからこの学校で始まる生活に、朝の自分では考えられない程胸が高鳴っていることに気づく。
『ふふっ』
意図せず微笑みが零れると、隣を歩く月島くんがこちらを見た。
「何わらってるの」
『何だか、楽しみになっちゃって』
「ふーん」
月島くんの返事は素っ気ない。
それでも不安に思わないのは、背の高い彼が私を見ろ下ろすその瞳が、どこか優し気だからだろうか。
『······?どうしたの?』
靴を履き替え、校門に向かう道すがら、ジッとこちらを見ている月島くんに気づく。
ふと、おでこをつつかれた。
「ねえ、その前髪どうしたの?」
『へっ?』
前髪
前髪??
『ひぁ!?』
そうだった。忘れていた。
前髪を切りすぎていた。
突き抜けるような青い空に白い雲。
提出してきた入部希望用紙に、新しく出来たお友達。
新しく始まる新生活への膨らんだ期待で、すっかり忘れていた。
未だジッと見つめてくる月島くんの視線に、頬が赤くなるのを感じる。
だって、首から上がとっても熱いのだ。
ペシッという音とともに、自分の手のひらを前髪を隠すように当てて撫で付ける。
あぁ、やっぱり短い。
『き、昨日、切りすぎてしまって、あのっ』
「プッ、何そんなに焦ってんの」
『自分でも、その、切りすぎてしまったなって、自覚が』
「ははっ、わかったわかった。いいよ、大丈夫。似合ってるから」
『あ。ほん、と?あの、えっと』
恥ずかしい。
顔から火が出そうって、多分こういうことだ。
横で山口くんがクスクス笑っているのが聞こえる。
あぁ、でも。
横で口元に手を当てて笑っている月島くんを見ていると、何だか少しこの前髪も良かったかもなんて、思ってしまった。