第8章 緊張を解すには?
「結局、緊張したらダメだって意識するとダメなんじゃねぇかなぁ。こう、他のことに意識を向けてやったら?」
『そうだね。衛輔くん達本当にありがとう!』
うん、日向くんに教えてあげよう。
これで少しは緊張が解れて、この前のように高く飛んでくれるといいな。
「あぁああの!!ちゃん!!!」
『っえ?·····虎くん?』
珍しく虎くんから話しかけてくれた。
何となく、受話器越しにザワっとした空気になったことがわかる。
私もびっくりした。
「俺!·····手のひらに緊張を解すツボがあるって聞いた事あるっス!そこ押したら、·····緊張、解れるんじゃないっすかね!」
『っそんなのあるの!?····虎くん凄い!』
何か受話器越しにバシバシ音が聞こえる。
「あ、痛っ!何すか!?」
『虎くん?·····どしたの?』
「あー、ちゃん何でもないよ。」
衛輔くんが答えてくれた。
そう言えば、結構話してしまったけれど、時間は大丈夫だろうかと、1度スマホを耳から離して時計を確認する。
お昼休憩の終了まで、あまりもう時間が無かった。
『あ、休憩終わりそう!皆ありがとう!虎くんもありがとう。後でツボ調べてみる!本当にありがとね。』
「また困ったことあったら、相談しろよ。」
『うん、衛輔くん。』
「またな。」
『海くんもありがとう。』
「、あんまり頑張りすぎんなよ。すぐ熱出すんだから。まぁ、研磨もだけどな。」
「は?····出さないし。」
「出すし。」
「出さないし。」
『ははっ、クロちゃんも研磨もありがとね。じゃあ、またね。』
スマホの向こうから、口々にバイバイが聞こえる。
少し寂しいけれど、やっぱり相談して良かった。
今日の部活が始まる時に日向くんに教えてあげよう。
悩みが解消されたからか教室までの足取りが、いつもより軽く感じる。
窓から入る心地よい風が頬を撫でて、髪を攫っていく。
フワリと浮いた髪を抑えて、教室まで急いだ。
私は知らなかった。
この時の会話の影響で、この日の虎くんの練習メニューが2倍になっていただなんて。