第8章 緊張を解すには?
side
それは、4時間目の授業が終わりに差し掛かった頃だった。
私は思いついてしまったのだ。とっても良い案を。
日向くんの緊張をどう解してあげたらいいのか、沢山考えたけれど、全然わからなくて。蛍に聞いてみたら、緊張しないと帰ってきてしまったし、山口くんに聞いたら、俺が知りたいよって帰ってきてしまった。
私は手のひらに人って3回書いて飲み込むという方法をとっているけれども、本当に効いているかは怪しいところ。
考えてみると、これはもうどちらかというと緊張を解すというよりルーティーンに近いような気がしたからだ。
そこでだ。
どこの高校もお昼休みというのは大体同じ時間にとると思う。
そして、研磨とクロちゃんはお昼休みは大抵バレー部のメンバーで過ごしている。
研磨に電話すれば、音駒高校メンバー皆に緊張を解す方法を聞けるのだ。研磨とクロちゃんは、緊張している所をあまり見ないからわからないけど、衛輔くんや海くんや、虎くんも一緒にいる。
きっと相談にのってくれる!
うん、これは名案だ!
授業が終了し、訝しがる蛍と山口くんを前にお弁当を早く食べ終えると、電話してくると2人に告げて中庭のベンチへと足早に移動した。
さっとスマホを取り出して、研磨の番号をタップしてすぐ様耳にあてる。
少しの機械音の後、すっかり聞きなれてしまった電話越しの研磨の声が聞こえた。
「もしもし。」
研磨のこの声だけで、安心して力が抜ける。研磨の声の力って凄い。
『もしもし研磨?』
「うん。どうしたの?」
『あのね、相談というか、聞きたいことがあってね。』
「ん、何かあった?」
『んー、あのね、研磨って試合の時緊張することある?』
「んー、·····ない。」
『ふふっ、やっぱり?あのね、同じ1年生のバレー部の子がね、練習試合が近くて凄く緊張しちゃって。どうしたら緊張って解れるのかなって。·····クロちゃんも緊張なんてしないよね。』
「しないと思うよ。」
『即答だね。研磨、今って、皆一緒?』
「うん。スピーカーにしようか?」
『うんっ。』
スマホ越しにザワザワとした音が聞こえる。
「だろ?どした?」
クロちゃんの声。
「え!?ちゃん!?」
これは衛輔くんだ。
海くんと虎くんの声は聞こえない。