第8章 緊張を解すには?
たったそれだけの彼女の仕草で顔に熱が集まるのを感じて、慌てて顔を逸らす。
正直、出会ったばかりの頃はのことを、落ち着いていて物静かで、小動物みたいな見た目に反して大人な女の子だと思っていた。だけど、蓋を開けてみれば彼女は年相応どころか少し幼い、見た目通りのふわふわした小動物みたいなやつだった。
あの最初の印象は、が人見知り故に作り上げたものなのだと思った。1度警戒を解いてしまえば、意外と人懐こいし、コロコロ表情を変える。それがまた魅力的に見えて、自然と惹き付けられてしまう。
『蛍?どうしたの?』
「別に、なんでもない。·····余所見してると転ぶよ。」
覗き込んできたの頭を鷲づかんで、前を向かせる。
こんな顔、かっこ悪くて見せたくない。
『わわわっ。』
「ほら、今のやつ、日向に教えてやったらいいんじゃないの。」
『人って書いて飲み込むの?んー、そうだね!日向くんに言ってみる。』
そう言ってニコニコ笑うの顔を見て、心臓を鷲掴みにされたような気になる。
きっと菅原サンはもう気付いてる。が本当はこういうやつだってこと。この前、を家まで送ると言ったあの人の目はもう多分俺と同じ目をしてた。
独占欲。
を手放したくないし、もう放っておけない。
厄介な相手を好きになったと思う。
多分、これからが誰かと関わる度に、こうして彼女の魅力に気付いて、同じように囚われるんだろう。
でも譲る気なんてない。
の口から他の男の名前を聞くだけでイラつくくらいにはもうはまってるし、余裕もない。
同じクラスで、家が隣同士だっていうアドバンテージを、本当に有難く思うよ。
隣を歩くを見ながら何となく、そんな事を強く思っていた。