第7章 お昼休みの出会い
案の定、あの後教室に帰って事のあらましを蛍達に話すと山口くんには心配されて、蛍には多分呆れられた。
「さん、大丈夫だった?」
「はぁー、だから着いてくって言ったデショ。」
と、2人はこんな感じだった。
お金を渡したいし、お礼もしたいのに何もわからないと2人に告げると、放っとけばいいじゃんと。
そんな訳にはいかないので、翌日お金を小袋に、そしてお礼にとチョコクッキーを焼いてラッピングしてもってきた。
すぐに会えるかどうか分からないので、防腐効果のあるココアパウダーを入れて日持ちのするチョコクッキーにした。
ちなみに残ったクッキーも持ってきて、蛍と山口くんにあげたら喜んでくれた。
名前も学年もクラスも分からないので、行くあてもなく、とはいえ学校を歩き回っても会える気がしないので、またお昼休みに購買へとやって来た。
蛍が着いて行くって言ってくれたけど、申し訳ないので断って、また教室に戻ってお昼を食べるのも時間がかかるので、近くの中庭でお弁当を食べようとお弁当も持ってきた。
準備は万端だ。
少しの間、相変わらずの人集りを眺めているとピョンッと黒いツンツン頭がその集団から抜け出てくるのが見えた。
『っ!』
昨日の人だ。
見失う訳には行かないので、すぐに追いかける。
う、歩くの早い。
走って後を追って、何とか背中の学ランの裾を掴む。
『っあ、あの。』
「っ?···あ·····昨日の!?」
『っ私、昨日のお礼がしたくてっ、お金もっ。』
「···金?あぁー、気にすんな!」
『でもっ。』
またニカッという効果音が付きそうな笑顔で振り向いた彼は何だか少し日向くんに似ている気がした。顔とかじゃなくて笑い方が。
2人とも、太陽みたいに笑顔が眩しい。
ちなみに、今日も彼は四文字熟語のTシャツを着ている。
今日の四文字熟語は、絶対領域。
·····絶対領域?
「取り敢えず移動しようぜ。ここじゃ人が多くてよく聞こえねぇし。お前、昼飯は?」
『え、あ、ここに。』
「じゃ、行こーぜ!」
絶対領域を胸に掲げた彼は、私の手を引いて歩き出した。
『ぇ、あ、あの。』
向かう先は、すぐ近くの中庭のようだ。
澄んだ青空が、目の前に見える。
私は、手を引かれるまま彼の後ろを歩き出した。