第2章 入学式
少し古い、それでも歴史を感じる重厚感のある大きな体育館の中で、滞りなく入学式は済んでいった。
見慣れない校庭、見慣れない校舎。
キョロキョロと辺りを見回している他の生徒達と同じように、視線をさ迷わせながら校舎の中を歩いた。
壁に張り出された大きなクラス表。
自分の名前と共に書かれている他の生徒達の名前はもちろん知らない名前だけだ。名前の書かれた紙の1番上に書かれたクラスの名前。私は1年4組でこの1年を過ごすことになるようだ。
進学クラスということで、中学校の時とは雰囲気が変わるのだろうかと心配したけれど、教室に入ってみれば優しい人達ばかりでこれからここで過ごすのだと思うと、朝の不安は大分薄らいだ。
前の席の子も、後ろの席の子も、「よろしくね」と声をかければ快く返事を返してくれた。
そして隣の席の月島蛍君。
よろしくね、と声をかけると、チラリと視線を寄越して「ヨロシク」と返事を返してくれた。
驚いたのが、私よりも40センチくらい大きいだろう長身の彼は、私と同じくバレー部に入るのだと言う。
今日の日程が全て終わり、ちらほらと教室から出ていく生徒の波を逆らって、ツッキー!!と窓際にいる私達の席にやってきたそばかすの彼も、どうやらバレー部に入部するらしい。
バレー部に紙!!出しに行こー!!と手を降っている。
「あれ?ツッキーの隣の席の子?俺、山口忠!!よろしくね!」
『私、。。よろしくね。』
山口くんの、少し赤くなった頬に釣られてか、こちらの頬まで桃色に染まっている予感。
新しく友達が出来るというのは、なんというか少し、気恥しいようなくすぐったいような気持ちになる。
何となくソワソワする気持ちを抑えるように、顔に少しかかった髪を耳にそっとかけた。
ポンッ
と、そんな私の頭に、月島くんが掌をのせてきた。
「紙、出しに行くんでショ。さっさと行くよ。」
「あ、さんも?」
『そうなの。実は私も男子バレー部。マネージャーなのだけど。』
そう言って、自分のクラスと名前、男子バレー部マネージャーと書かれた入部希望用紙を山口くんに見せると「じゃあ、部活でもよろしくね!」とクシャッと顔を崩して人懐こい笑顔をこちらに向けた。