第6章 三対三
「クイックでガンガン点稼いで、敵のブロッカーの注意を日向に向けさせる。そうすれば他のスパイカーが活きてくる。」
影山くんが私の言葉に続いた。
本当にその通りだ。日向くんに目が行けば、パワーのあるスパイカーの田中先輩が活きてくる。スパイクが打ちやすくなる。
『ブロックに関しては、日向くんの瞬発力とジャンプ力があればボールがどこに上がるのか見てから飛んでも、ワンタッチを狙えるんじゃないかなって思うんです。』
「俺もそう思う。相手の攻撃を叩き落とすよりも、とにかく触って勢いを弱める。」
タイミングさえ合えば、手がネットを超えさえすればブロッカーはスパイクを止められる。そんなに上手くは最初はいかないかもしれないけど、きっと出来る気がする。
「よし!決まりだな!お前らやっぱり凄いな。」
澤村先輩に褒められた。
嬉しくて頬が緩む。影山くんにも「お前、よく見てるな。」って。
きっとこれは、褒めてくれているのだと思う。
影山くんの目が輝いているように見えるから。
思ったよりも話し合いは早く終わって、坂ノ下商店に入った頃はオレンジ色だった空は、日の入りと共に暗くなりそれでもまだオレンジ色を少し残した空へと変わっていた。これが黄昏時というのだろうか。
藍色と茜色のコントラストがとても綺麗だ。
空を見上げていると、後ろから声がかかった。
「ちゃん、帰ろっか。送るよ。」
少し残った茜色が顔にさしたスガ先輩だ。
笑顔がとっても綺麗。
『あの、本当にいいんですか?···申し訳なくて。』
「いいのいいの!俺がちゃんのこと送りたいから。」
『ぁ、ありがとうございます。すみません。』
澤村先輩と、影山くんに別れを告げてスガ先輩と歩き出す。
スガ先輩のゆったりとした足取りが、私に合わせてくれているというのを表している。
こちらに引っ越してきて思う。私は周りの人に恵まれている。
引っ越してくる前も、そしてこちらに来てからも、出会うのは優しい人達ばかりだ。
「ちゃんって、中学の時バレーやってたの?」
隣を歩くスガ先輩から声かかかった。
相変わらず歩くスピードはゆっくりで、こちらを見下ろすその視線はとても優しい。