第6章 三対三
皆から少し遅れてあんまんを食べ終えて、さあ蛍達と家に帰るかと坂ノ下商店に背を向けたところで、スガ先輩に声を掛けられた。
「ちゃん。ちょっと日向のポジションのことで相談したいんだけど、いいかな?」
『わ、私ですか?』
「うん。ちゃんの意見も参考にしたくて。」
『私で良ければ、喜んで。』
蛍と山口くんの方を見上げると、蛍がこくんと頷いた。
「ここで待ってる。」
『え?いいよ、大丈夫だよ蛍。まだ明るいし、1人で帰れるから、蛍と山口くんは先に帰ってゆっくり休んで。』
蛍は本当に優しい。でも、私の為に待ってもらうなんて申し訳なさすぎる。練習とはいえ3対3で試合をしたばかりだし、せっかく早く部活が終わったのだから、ゆっくり休んで欲しい。
「大丈夫。終わったら俺がちゃん家まで送るから。」
『っえ?スガ先輩?』
後ろからスガ先輩の声。
「俺が引き止めてるんだから、送ってくのは当たり前だべ。」
『で、でも。』
「いいからいいから!じゃ、月島も山口も、お疲れー!」
スガ先輩は、そう言って私の肩を後ろから掴んで、坂ノ下商店の方に押していく。
『蛍、山口くんっ、またね!』
振り返って手を振ると、2人の何とも言えない顔で手を上げているのがが目に入った。
申し訳ないことをしたかな。
と、あまり深く考える余裕もなく、あっという間に坂ノ下商店のお店の中に連れられて、既に座っていた澤村先輩と影山くんの前の椅子に腰を下ろした。隣にはスガ先輩が座った。
坂ノ下商店の店長さん初めて見た。
研磨と同じ金髪だ。
どうやら、話の内容というのは、日向くんのポジションをMB(ミドルブロッカー)にするのはどうかということのようだった。
もう1人のMBは背の高く、ブロックの得意な蛍を置くとして、もう1人は日向くんにということだ。
ブロックの要のMB。一見、日向くんでは不釣り合いに見えるかもしれないけれど、これは良い案だと私も思う。
「さんはどう思う?」
『えっと、私も日向くんはMBがいいと思います。今はWSとしてスパイクを打つことよりも、囮として、前衛にいる時に横幅めいっぱい使ってクイックで攻撃する方がスピードを生かせるような気がします。勿論、後衛にいる時もバックアタックが出来るならそれも期待します。』