第6章 三対三
今日は土曜日。朝から練習を開始できたということもあって、部活が終了した時間はまだ空が茜色に染まり始めた頃だった。
いつものように、蛍達が待ってくれていて、一緒に歩いて校門を出る。眩しいくらいのオレンジ色の空が、眼下に広がる街を照らしていた。それがとても綺麗で、思わず足を止める。
「これから、烏野バレー部としてよろしく!」そう言った澤村先輩達を思い出し、胸が熱くなる。また、ここで頑張ろう。
そう、改めて決意できた日だった。
「さん?」
『あ、ごめんね。』
蛍と山口くんから少し遅れてしまった距離を走って縮めて、開けてくれている間に収まって、また歩き出す。2人の顔を交互に見上げると、夕焼けに照らされていてとても綺麗に見えた。
そう言えば、と歩いている途中に思い出す。
私達がジャージを貰ったすぐその後、武田先生が急いで体育館に駆け込んできて、青葉城西高校と練習試合が決まったと嬉しそうに言っていた。県内ベスト4の学校だそうだ。
さすがに、東京の学校のバレー部については知っていても、宮城県のバレー部については分からないことが殆どだ。
宮城県と言えば、強豪校の白鳥沢学園にいる牛島若利さんくらいしかすぐには浮かばない。でも、何となく青葉城西って聞いたことがあるような。
もちろん調査に来たことなんてないし、となると見かけたのは月刊バリボーか。
うーん、と悩んでいる間に坂ノ下商店のすぐ近くまで降りてきていたことに気づく。考え込むと周りが見えなくなるのは私の悪い癖だ。
「おーい!お前ら!これ食えよー!」
田中先輩が、こちらに向かって紙袋をゆさゆさと揺すっている。
聞けば、澤村先輩が肉まんを奢ってくれるのだそう。
澤村先輩にありがとうございますと頭を下げていたら、スガ先輩が声をかけてくれた。
「ちゃん、何食べたい?肉まん、カレーマン、あんまんがあるかな。」
『わぁー。私、あんまん食べたいです。』
「あんまんね!はい、どーぞ。」
『ありがとうございます。』
1口ぱくりと食べてみると、まだ温かい。
甘い餡子の味が口いっぱいに広がって、疲れた体に染み渡る。
「ちゃん、美味しそうに食べるね。甘いもの好き?」
『はい。甘いもの好きです。あんまんも、美味しいです。とっても。』
顔に出てしまってたみたい。
恥ずかしい。