第6章 三対三
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鳥のように高く飛ぶ日向くんと、黒髪の男の子影山くんのセットアップが凄くて、タオルを持って駆け寄って少しお話した後のこと。
日向くんと影山くんは近くにいた澤村先輩にやっとの思いで入部届を出すと、次は蛍の所に移動した。
試合の最初と最後には握手をするものだと無理やり蛍の手を追いかける日向くんを見て、その様子がとても面白くて笑ってしまった。
隣にいる影山くんとは、まだまともに話したことがないと思い、ふと隣にいる影山くんに視線を移すと、影山くんもこちらを見ていたようですぐに目が合った。
『っあの、影山くん、改めて、私1年4組のです。よろしくね。』
「あ、あぁ。俺は、影山飛雄、よろしく。」
すぐに目を反らされてしまったけど、悪い人じゃなさそう。
綺麗な指先。凄く手入れされているのが分かる。
トスを正確に上げるために、指先を大事にしているんだね。
ふと、蛍の方に視線を移してみると、結局日向くんと握手したみたい。凄く嫌そうな顔をして自分の手を見てる。またそれが面白くて、ふふっと笑いが零れてしまうと、蛍のジトッとした目と合ってしまった。しまったと思って目を反らしてみたけれど遅かったみたいだ。
「ちょっと、笑わないでくれる?」
頭をワシャワシャと撫でられて髪の毛がボサボサになってしまった。
『ふふっ、ごめんね。』
蛍にボサボサにされた頭を手ぐしで戻していると、澤村先輩に言われて潔子先輩がダンボール箱を運んできた。
そして潔子先輩がそのダンボールを開けると出てきたのは【烏野高校 排球部】と書かれた真っ黒なジャージ。
本物の烏のような綺麗な漆黒。
『うわぁ。かっこいい。』
思わず声が漏れてしまって、慌てて手で口元を隠す。
「ふふっ。ちゃんのもあるよ。」
『っ本当ですか?』
「もちろん。サイズは大丈夫だと思うんだけど。」
皆それぞれ受け取って、袖に手を通している。蛍も、渋っているけれど、先輩達に急かされて結局着ている。
私もそれに倣って、黒いジャージに袖を通す。
少し大きめだけど、動くには全く問題無さそうだ。
1度くるりと回ってみたら、横にいた蛍に頭をポンポンと撫でられた。
それが何だか嬉しくてふふっ、と笑いが零れた。