第6章 三対三
「ちゃんが試合中にとってたノート。何か、凄いこと書いてある気がする。」
「·····凄いこと?」
ちらりと見えた彼女のノートの文字を思い出す。
【日向】の文字の横に
【上空での打ち分け】
【空中での一瞬の余裕】
自分にはまだその内容が何を表すのか分からない。
でも、背中がゾワリと波打ったのが分かった。
きっと彼女には、俺たちにはまだ分からない”何か”が見えているような。
「いや、わかんないんだけどさ、何かあの子、·····凄い子なんじゃないかな。」
「·······今年の1年は、選手もマネージャーも、凄いのが入って来たな。」
大地の言葉に頷いて、つーっと頬に流れてきた汗を拭う。
目が離せないと思った。
これからの烏野バレー部はきっと化ける。
落ちた強豪なんて、飛べない烏だなんてもうよばせない。
1年生5人で、じゃれついている姿を見ながら、高鳴る鼓動を抑えるように胸元のシャツをぎゅっと、握った。
そして、彼女からも目が離せないと思った。
ぎこちなく笑うと思ったら無邪気に笑ってはしゃぐ。
大人びたようなふわりとした笑みを見せたと思えば、声を上げて幼い顔で笑う。
人を心配する不安そうな顔、試合を見つめる真剣な目。
コロコロと変わるその彼女の全てが自分の心を惹き付けて止まなかった。