第6章 三対三
そして何より1年生の活躍が目ざましかった。
試合自体はフルセットまではいかず、2-0で終わったし、少しギスギスとして胸が痛い場面もあったけれど、皆の活躍は本当に素晴らしく、これからの活躍を考えると胸が痛いほど高鳴ってしまう。
まだ呼吸の整わない試合後のメンバーに、清水先輩がドリンクを持って行ったその後に、私もタオルを手渡しに行く。
興奮が冷めやらないまま、蛍と山口くんにタオルを渡した。
『お疲れ様っ。2人とも凄いよっ。山口くんは、やっぱりずっとやってきただけあって、攻守のバランスがいいね。蛍も、ブロック凄かったねっ。蛍はリードブロック得意なんだね。よく考えて飛んでたのがよく分かったよっ。本当に2人とも凄いよっ。あの、わたし·····感動してっ、本当に2人とも凄いよっ。』
伝えたかったことは沢山あった筈なのに、上手く言葉に出来ない。
恥ずかしくなってきて、顔に熱が集まるのがわかる。
2人の顔を見上げると、やっぱりポカンとしてる。
恥ずかしい。
でも、伝えたかった。皆素晴らしかったのだと。
『っあの、日向くん達の所にタオル持って行ってくるねっ。』
「·····うん。」
「あ、行ってらっしゃい·····さん。」
2人の返事を後ろに聞きながら、これから頑張ろうと決意を新たに出来た気がした。
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side 山口忠
去っていくさんの後ろ姿。
さっきまで目の前にあった彼女の声と姿がリフレインする。
どちらかというと、いつも物静かなさんが、あんなにはしゃぐことがあるなんて。驚くと同時に彼女の少し上気した頬と嬉しそうな声に、こちらまで嬉しくなって何だか凄いことを自分がしたような気になる。
「さんって、あんな風にはしゃいだりするんだね。」
今度は日向達に何か言っているさんの背中を見ながらツッキーに話しかけた。
「ツッキー?」
返事がないので隣を見てみると、こちらから顔を反らして黙っているツッキー。
あまり見ることの無い幼馴染の姿に驚きつつまた声をかける。
「ツッキー、もしかして照れてる?」
「うるさい、黙れ山口。」
「ご、ごめんツッキー!」
ポーカーフェイスのツッキーを、こんな風にしてしまうさん、凄い。
僕はまた、彼女の後ろ姿に目線を移した。