第5章 ビターチョコレート
授業も部活も終えたその日の夜。
帰宅すると、リビングのテーブルの上にはお母さんが作っておいてくれたのか私の好きなオムライス。
それと一緒に【お帰りなさい。部活、お疲れ様。冷蔵庫にの好きな苺もあるから食べなさいね。】というメモ。
お母さんのこういう心遣いがとっても嬉しい。
東京を出て、研磨とクロちゃんと離れたことは、私にとってはとても大きなことで。その寂しさをわかっているお母さんは、こちらにきてから大分気を使っているように感じる。
それが嬉しい反面、申し訳ないような。
それでもやっぱり苺はとっても嬉しいので、冷えた苺を頬張りながら、そう言えば研磨とクロちゃんにバレー部のマネージャーになったことを言っていなかったと思い出す。
部活はもう終わっている頃だと思うし、寝るにはまだ早い時間だ。
電話をかけてみようと思い立ってスマホを手に取る。
研磨にかけるかクロちゃんにかけるか。基本的には電話はいつも研磨にかける。研磨はちゃんとスマホを携帯してくれているから、ちゃんと出てくれる。クロちゃんは自分の部屋に置きっぱなし、とか充電してコードに繋いだまま放置とか、そんな感じなのでそもそもスマホを触っているイメージもない。
でもこの前は研磨にかけたから、また研磨にかけたら怒るかな?
うーん、悩む。
取り敢えずクロちゃんにかけて、出なかったら研磨にかけよう。
そう思い至って、クロちゃんの名前をタップする。
少しの機械音の後、以外にも直ぐに耳元から聞きなれた声が聞こえた。
「もしもーし。」
『あれ、出た。』
「そりゃ、かかってきたら出るでしょーよ。」
『だって、クロちゃんスマホいつもどこかに置きっぱなしだから。出ないかなって、思って。』
「寂しがり屋のちゃんが東京に行ってから、いつかかってきてもいいように、ちゃーんと肌身離さず持ってますよー。」
『へ?ほんとに?·····クロちゃん優しい。』
「ボクはいつもとっても優しいですー。」
『ははっ、そうだね。クロちゃん意地悪だけど、優しいよね。』
「意地悪は余計じゃない?·····んで、どうしたの?何かあった?」