第5章 ビターチョコレート
『何かって程じゃないんだけどね、報告があって。』
「ふんふん。」
『私ねー、バレー部のマネージャーすることにしたの。』
「マネージャー?女子の?」
『女子?もちろん男子バレー部だよ。』
「·····は?男バレ!?···男バレ!?」
『え?うん。·····だって今までもそうだったでしょ?』
「っそうだけど、俺も研磨もいないじゃないの。」
『だって、私もバレー好きだから。』
「だからって、男バレじゃなくても·····、帰りは?暗いでしょ?まさか1人で帰ってんの?」
『それがねクロちゃんっ。お隣さんがね、同じクラスで同じバレー部なんだよ!凄いでしょー。だから一緒に帰って貰ってるの。』
「それって男?」
『そうだよ、一緒の部活だから一緒に帰ってもらえるんだもん。』
少しの沈黙の後、電話越しに聞こえるクロちゃんの大きい溜息。
何でだ何でだ?
頭の中に浮かぶ沢山の疑問符。そのままクロちゃんに疑問をぶつけてみる。
『クロちゃんどうしたの?』
「あのね。男はこわーーい狼さんなんです。」
『へ?』
「その隣の奴も、こわーーい狼さんかもしれないから、あんまり近づいちゃだめ。」
『なぁに?クロちゃんどういうこと?』
「は女の子だし、可愛いんだから!ちゃんと気をつけろってこと。」
『ん?うーん。わかった。』
「あんまり他の男と仲良くなっちゃうと、俺も研磨もヤキモチ妬くから。」
『ははっ。それはよく分かった。』
「何かあったら、すぐ俺か研磨に電話すること。わかった?」
『はーい。』
クロちゃんはいつも心配性だ。
研磨も心配性だけど、クロちゃんはもっと。
「今日お前んとこの母ちゃんは?仕事?」
『うん。お仕事。』
「ってことは、家に1人か。こんだけ離れてちゃ、お前んとこ行ってやれねぇな。寂しくないか?」
『うーん、ちょっと寂しいけど、クロちゃんと電話出来たし大丈夫。』
「そうか。まぁじゃ、取り敢えず頑張れよ。何かあったらすぐ言え!あと風邪引くなよ。」
『ふふっ。はーい。』
「じゃあ、おやすみ。」
『うん、おやすみ。』
何だかんだ、こうやって気にかけてくれるクロちゃん。
こうやって心配してくれる人がいる私は幸せ者だなと思う。
電話を切るとやっぱり少し寂しいけど、これでまた明日から頑張れそうな気がした。