第4章 烏野高校バレー部
明かりの灯ったグラウンドの端に沿うように3人で歩く。
まだ髪を結んだままの首元が少し寒い。
まだ気温は低いというのに、もう既に青々と生い茂っている芝生と草を踏みながら空を見上げると、薄くかかった雲の切れ間に綺麗な半月が見えた。
ふと、耳に何かを弾くような音が聞こえる。
間違えるはずが無い、バレーボールが腕を弾く音だ。
キョロキョロと辺りを見回すと、自分達が目指しているグラウンドの扉の近くの明かりの下で、誰かがレシーブの練習をしているのが見える。
『こんな時間まで、誰だろう。』
「出禁になったっていう1年かな?」
私がポツリと漏らした言葉に山口くんが返してくれる。
大分近くまで歩いて行くと、黒髪の男の子と、オレンジの髪の男の子が見える。
あれ?オレンジの髪の子は、高さがものを言うバレーボールの世界を考えると大分小さいように見える。リベロだろうか?
でもそれにしてはレシーブが上手いようにも見えない。
高校からバレーを始めるのだろうか?
ぽけーっとそんな事を考えていると
「「危ない!!」」
『え?』
何重かに聞こえた声、ふと視線を上げると自分の顔を目がけてボールが飛んで来るのが見える。
こんな時、スローモーションに見えるって本当だ。
手も間に合わないや。
あ、当たる。
反射的に目が閉じて、来るであろう衝撃を待つ。
────バシッ!
いつまで経っても来ないその衝撃、目を開けるとボールではなく、大きな手が見える。
蛍が庇ってボールを手で弾いてくれたみたいだ。
『蛍』
思わず蛍の制服を掴んで声を掛けたけれど、返事がない。
代わりに蛍は後ろ手に私を庇うように移動させたので、大きな蛍の後ろにすっぽりと隠れてしまった。
後ろからもわかる、蛍のピリピリとした空気。
「へーっ、本当に外でやってる!君らが初日から問題起こしたっていう1年?」
そう言った蛍は、いつも私に向ける優しい声とは違う声でそう告げた。