第4章 烏野高校バレー部
暦は4月に入ったとはいえ、まだまだ日が落ちるのは早い。
見学に没頭していると、あっという間に練習の時間は終わりとなった。
体育館の上部に設置された窓を見上げると、すっかり暗くなってしまっているのがよくわかる。体育館内は程よい熱気に包まれているけれど、外に出ればやはり寒いのだろうと容易に想像がつく。
片付けをしている先輩達に倣って、一緒にボールを片付けていると、潔子先輩から声がかかった。
「部活終わりの外はもう暗いから、私、送っていこうか?」
なんと申し訳ない提案だろうか。潔子先輩も女性の身であるし、なによりこんなに美人なのだ。送って貰うなんて、もし帰り道に何かあったらと考えると、こちらも身震いがしてしまう。
『そ、そんなっ。あの、蛍、えと月島くんが家が隣同士なので、一緒に帰って貰えるようにお願いしてみます。』
私が潔子先輩にそう説明していると、頭にポンポンと撫でられる感触。ふと見上げようとすると、蛍が後ろから覗き込んできて、ふと視線が合った。
「そんなの、当たり前デショ。こんなに暗いのに、1人で帰す訳ないじゃん。」
『蛍』
「月島、ちゃんのこと、頼むわね。」
「はい。·····着替えたら部室棟の前で山口と待ってる。」
『蛍、····ありがとう。』
「ん」
こうしてまた蛍の優しさを思い知る。
こうして先回りして、いつも思いやってくれるのだ。
胸がぽかぽかと暖かくなるような、そんな優しさを分けてくれるのだ。
後片付けを終え、体育館を出るとやっぱり寒い。
昼に出ていたお日様の有難みを痛感する。ぽかぽかと照る太陽がない夜はこんなにも寒い。
足早に部室に入り着替えを済ませる。
朝も寒かったので、中にセーターを着込んできて良かった。
潔子先輩に挨拶を済ませ、部室を出ると蛍と山口くんの姿が見えた。やっぱり少し待たせてしまったみたいだ。
寒いのに申し訳ない。
『待たせちゃってごめんね。』
「さんお疲れ様ー!」
「走らなくていいから、転ぶよ。」
2人は私が着くと、当たり前のように2人の間に隙間を作ってくれる。それが何だかとっても嬉しくて。顔が綻ぶのを抑えきれず、ニヤけた顔のまま、2人の間に収まる。
『2人ともありがとう。』
そして私はいつも、こうしてお礼を言うのだ。