第4章 烏野高校バレー部
私と潔子先輩の少し後に体育館に入ってきた、縁下先輩と木下先輩と、成田先輩にも挨拶を済ませ、先輩達はアップを始めた。
今日は取り敢えず、大まかな練習内容や流れ等を把握する為に、潔子先輩の仕事を少し手伝いつつ見学をするということだった。
タオルの準備は万端。先輩達のアップが終わる前に給湯室にドリンクも作りに行く。作る前よりも重くなった籠を持って、給湯室を出て体育館内に戻ると、入口の近くに蛍と山口くんの姿が見えた。
思わず嬉しくなって、手を振ってみると山口くんは手を振ってくれるし、蛍もふっと笑みを零してこちらを見てくれた。
そんな蛍を見た田中先輩が、驚いた顔をして私と蛍を交互に見ている。なにか、あったのかな?
あ、澤村先輩に注意されてる。
ちょうど戻った頃にアップも終わったようで、練習を始める前に今年バレー部に入部する一年生は四人だと澤村先輩から説明を受けた。でも目の前には蛍と山口くん。あとの二人はどこにいるのだろうと首を傾げると、スガ先輩が答えてくれた。
「ちょっとイロイロあって。体育館、出禁になってるんだよね」
入部早々出禁だなんて。凄い。
何があったんだろう。
「実はさ、その一年生が最初の部活に来た日、揉めて教頭先生のカツラふっとばしちゃってさ。」
『教頭先生、カツラだったんですか?』
「ははっ!そ!んで、怒らせるとこわーい大地を怒らせちゃって、出禁。今週の土曜日さ、新入生がどんな感じか見る為にも三対三で試合やるから、その時に会えるよ。」
私が不思議そうな顔をしてしまったからだろうか、スガ先輩が教えてくれた。
温和そうな雰囲気の通り爽やかに微笑むスガ先輩が、今度はニシシと効果音の付きそうな、悪戯っ子のような顔で笑う。
「どした?」
『ぁ、いえ。すみません。』
コロコロと変わるスガ先輩の表情に少し見蕩れてしまった。
慌てて首を振って目線を外すと「ちゃん、かわいー!」という声と共にスガ先輩に頭をワシワシと撫でられてしまった。
途端に、首から上が何だかとっても熱くなってしまって、恥ずかしくて恥ずかしくて、俯いた顔をなかなか上げられなくなってしまった。
練習に戻るスガ先輩を見送ってから、私も見学に専念することにした。