第4章 烏野高校バレー部
もしかしなくても、あの人達はバレー部の先輩達だろうか?
「あれ清水、もしかして彼女が?」
『そう。彼女が新しいマネージャー。』
黒髪で短髪の人が、優しそうな微笑みを携えて、私と潔子先輩を見た。自然と背筋が伸びて緊張してしまう。
『初めまして。一年四組のです。』
「俺は澤村大地、三年、男子バレー部のキャプテンだ!これはまた、可愛らしい子が入ってきてくれたなー。」
「俺は菅原孝支、三年!スガでいいよー!ちょ、田中すっかりかたまっちゃってるべ。たーなーかー!!」
「っうおあ! お、俺は!田中龍之介!二年!」
『先輩達のこと、頑張ってサポートしたいと思います。よろしくお願いします。』
先輩達から口々によろしくと声がかかる。
灰色の髪を春の風に靡かせたスガ先輩が、固まっている田中先輩のお腹の横を突ついている。
田中先輩の様子を見るに大分強い力のようだ。
澤村先輩は、その様子を見て微笑んでいるけど、何だか慣れた様子。これが日常茶飯事なのだろうか?
きっと、とっても信頼し合って、仲良しなんだ。
三人を取り巻く空気が、それを何となく感じさせる。
『ふふっ。』
「おい田中ー!笑われてんぞー!」
「スガさんが俺の腹つつくからッスよ!!」
『ごめんなさい、仲良しなんだなって、微笑ましくなってしまって。』
そこにいた五人で笑い合うと、澤村先輩が「ほら!練習行くぞー!」と切り上げて歩き出した。
行き先は、体育館。
朝練の名残か、扉を開けるとそこにはバレーボールのネット。
先輩達に続いて、シューズを履いて体育館に入ると、足元でキュキュッと音がする。この音が好きだ。
体育館を踏みしめる時のこの音が。
こちらに引っ越してくるまでは、クロちゃんや研磨と共にほぼ毎日のように毎日踏みしめていた体育館。
宮城県に来てから幾日か経ったけれど、ようやく踏みしめたその音に、光景に、ドキドキと胸が高鳴っていくのを抑えきれない。
体育館を見渡すと、まだ誰もいないようだ。
宮城県の四月はまだ寒い。
体育館内の静寂さも相まってか、少しだけれど肌寒く感じる。
蛍も、山口くんもまだ来ていないようだ。