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Gerbera~原作沿い長編~【ハイキュー】

第23章 番外編 とある少女Aの独白





入学式も終わり、ザワザワと騒めく教室の中。早々に自分の席を見つけて着席していた私は、固まって喋っているクラスメイト達に声を掛けたりすることも、されることもなく、ただ手持ち無沙汰に黒板に書かれていた座席表を何度も読み返していた。


これでいいと思った。
何事も無く1年を、いや、この高校生活を終えられればいいと。


終わらない喧騒の中、ボーッとそんな事を考えていた。





ふと、ザワザワとしていた教室の音が小さくなる。
何となく気になって、私も黒板から目線を外す。


何が原因なのかと、クラスメイトが見つめる先を同じように視線を追ってみると、それは教室の入口から入ってくる1人の女の子に向けられていて、同じようにその女の子を見つめてみる。




瞬間、自分の喉から、ひゅっと音が鳴るのが聞こえた。








何て、何て綺麗な人がいるのだろうか。






まるで、その子の周りだけ空気が違うみたいだ。



たっぷりのミルクを注いだ、甘い紅茶の様な色をした髪の毛はふわふわと波打つように僅かな風に揺れて、教室の大きな窓から入る光の反射しているその瞳は甘い甘い蜂蜜みたいな色だ。
小さな鼻に、形のいい赤い唇。
あぁ、髪と同じ色の長くてボリュームのある睫毛は陽の光を浴びて、透けてしまいそう。


いつかテレビで見て、なんて綺麗なんだろうと息を飲んだビスクドールのよう。
少し緊張した面持ちで歩く彼女は、それでも花弁に朝露が滲むように上品だ。



まるで絵本の中から出てきた妖精のような彼女から視線が外せない。


ふわふわと、それでいて上品な動きで黒板をチラッと見てまた歩き出すとその視線が急に私に向けられた。

途端に、また喉が閉まったようにひゅっと音をたてる。
どんどんと近づいてくる彼女の目から視線を逸らせない。


近づいてくる、蜂蜜のような琥珀色の瞳。
あれ?琥珀色の瞳って珍しいのではなかったっけ?確かスウェーデンだとか、北欧の人にたまに見られる瞳だったかな。
とても珍しい色ではなかったか。なんて、どこで知り得た情報だか思い出せないようなそんな知識を、まるで現実逃避のように頭に巡らせていると、気付けば目の前にその女の子はやって来ていた。




『初めまして。です。えっと、私、後ろの席みたいなの。これから宜しくね。』





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