第23章 番外編 とある少女Aの独白
なんてつまらない毎日を送っているのだろうと思っていた。
生まれ育ったこの街はとても穏やかでいいところだ。
両親はとても優しく、そして私を慈しんで育ててくれた。
3つ下の弟も、こんな私を慕ってくれている。
ただ、その両親と弟の慈しんでくれているこの私は、どこか欠陥品なのではないかと思っている。
その認識は正直今でも変わっていない。
どちらかと言うと美目麗しい両親から産まれた私の顔は、どちらかと言えば整っているのだと思う。
真っ黒で真っ直ぐに伸びる髪、少し切れ長の、髪と同じ色の瞳に、薄目の唇。
思いを寄せてくれた異性もいた。けれど、少し時間を過ごすと決まってこう言って別れを切り出されるのだ。
「綺麗なだけで面白くない。」
「何を考えているのか分からない。」
話をするのが得意ではないのは自分でも分かっていた。同年代の女の子達に比べて達観した性格をしている事も。可愛げというものが無いということも。
だからこそ、思いを寄せてくれたその人に出来るだけ寄り添おうと自分なりに努力はしたつもりだった。
けれど、そんなものは恐らく無駄な努力だったのだ。
だって、何よりの原因はきっと、あまりにも変わらないこの表情なのだから。
ちゃんと喜怒哀楽はあるし、それを出しているつもりでも私の顔はそれをほんの少ししか感知してくれないし、表情にも表してくれないらしい。
そんなつまらない私には、やっぱり友達なんていうものは出来なくて。
けれど、こんなつまらないわたしと一緒にいて不快な思いをさせるくらいならそれでいいと思った。
それでも、告げられる言葉の数々と向けられる視線は、まるで真綿で締め上げていくように少しずつ私の心を痛めつけ続けていたように思う。
それでも毎日学校に通って、勉強して、家に帰ってご飯を食べて寝る。
毎日毎日繰り返されるその日々の営みは、今までずっと繰り返してきたものだし、これからもずっと続くものなのだと思っていた。
例えばそれが、高校生という新しい舞台に上がったとしても、何も変わらないと、そう思っていた。