第22章 インターハイ予選 対伊達工業戦
[いいチームですよね!あぁ、それと。マネージャーがとっても可愛いんです。明日また会えるのが楽しみです。]
[烏野高校のマネージャと言えば、今大会の会場で大変噂になっていたそうですね。あぁ、本当に可愛らしい。]
及川さんが映っていた画面からまたパッと切り替わって、席に座ってスコアをつけている私が映った。
烏野の誰が映るのだろうとワクワクしていた私は、まさか自分が映るなんて微塵も思っていなくて。
開いた口がふさがらないって聞くけれど、まさか自分がそれを体験する時がくるなんて。顔に熱が集まるのがわかる。でも、パニックになってしまってどうしたらいいのかわからず、取りあえず顔を両手で覆ってみる。視界からテレビは消えたけれど、バクバクとなる心臓はとてもじゃないけれど当分落ち着きそうもない。
結局、そのまま烏野高校の試合風景は映ることなく次のコーナーに移ってしまった。
シーンとテレビの音しか聞こえない職員室に、澤村先輩の声が響いた。
「先生、ありがとうございました。」
やるか、と続けて静かな声で澤村先輩が言ったのを皮切りに空気がピリピリとして何だかいたたまれない。
職員室から出てミーティングの為に体育館に移動するけれど、隣を歩く蛍もやっぱり少しピリピリしている。
『ご、ごめんね。』
「なんでが謝るのさ。」
『皆が映ると思ってたのに、何もしてないのに、私、映るなんて。』
「あのさ、そんなことで皆怒るわけないじゃん。ただ、あんまりこうやって、のこと見せびらかしたくなかっただけでしょ。」
『う、うん。』
蛍に頭をポンポンと撫でられる。
その手の感触に、少し心が落ち着いて。
あぁ、ミーティングの前に今日のビデオをDVDに落として鵜飼監督に渡さなくてはと思い出す。
『ぁ、蛍、忠くん。私ちょっと視聴覚室に行って今日の試合のDVD作ってこなきゃ。体育館、先に行っててね。』
「うん、わかった。気を付けてね。」
忠君の声を聴きながら、行き先を変えて歩き出す。
まだ熱が残る頬に、少し冷たい自分の手のひらを当ててみる。
まだ頬が熱いのは引かない。
視聴覚室でDVDを作り終える頃には戻るだろうかと考えながら、教室までの道のりを急いだ。