第22章 インターハイ予選 対伊達工業戦
ゆらゆらと心地良いバスの揺れが、キキッという小さなブレーキ音と共に止んで、窓の外に視線を移すとそこにはもう見慣れた校舎があった。すっかりここは自分の通う学校なんだと心で思っているからか、何だかいつもと同じその佇まいに安堵の息を漏らしてしまう。
眠そうにバスから降りてくる皆を、何となく微笑ましい気持ちで見つめながら蛍と山口くんが降りてくるのを待った。
『沢山眠れた?』
「ふぁーあ。うん。さんは眠らなかったの?」
『うん。ぜーんぜん、眠くならなかったの。』
山口くんに続いて出てきた蛍にも視線を向ける。
蛍も山口くんと同じように眠そうで、欠伸を噛み殺している。
『ふふっ、蛍、前髪の横がぴよんてなってるよ。』
「え、どこ?」
『そこそこ。』
窓辺に頭でも付けて寝ていたんだろうか。
前髪の横がぴょこっと跳ねている。いつも身嗜みには気を使っているように見える蛍のそんな様子が少し珍しくて指摘してみると、はねた部分を探すように頭に手をさ迷わせている。
それでも、近くに指が通るのになかなかお目当ての場所に手が行かない。
『ふふっ、ここだよ。』
焦れったくなってしまって、蛍の頭に手を伸ばす。
私の手に気づいた蛍が、少しだけ頭を下げてくれた。
ふわふわの髪の毛を少しだけ撫で付けると、すぐにぴよんと跳ねた髪は元に戻った。
『はい、どーぞ。』
「ん、ありがと。」
「ツ、ツッキーとさんて·····」
ふと視線を感じて横を見ると山口くんがこちらを凝視していた。
どうしたんだろうかと首を傾げると、続けて口を開いた。
「ほんと、仲良しだよね。さすがツッキー。」
「うるさい山口。」
「ご、ごめんツッキー!」
『ふふっ、山口くんとも仲良しなつもりなんだけどな。』
「えっ!ほんと!?」
『うん。あ、そうだ、忠くんって呼んだらもっと仲良くなれる?』
「えぇ!それは、うん、えっと、じゃあ俺もちゃんって呼んでもいい?」
『うん、もちろんっ。』
「そ、そっか、わかった!」
「あのさ、何なのキミ達今更。」
『ふふ、本当今更だったね。』
そんな会話をしながら、バスから移動しようとしていると校舎の方から武田先生!!と呼ぶ他の先生の声が聞こえた。