第22章 インターハイ予選 対伊達工業戦
side 東峰 旭
背中は俺が守ってやると、西谷が言った。
頑張ってと、ちゃんが言ってくれた。
それだけで、怖いものなんてないと思えた。
背中を押されたような気がした。
試合中に、しんどい場面も沢山あった。
スパイクを打っても、何度も何度も止められた。
でも、ずっと心が叫んでいる。
思考を止めるな
足を止めるな
十分な助走距離の確保
全力のジャンプ
何回でも
何回でも
何回でも!!!
気持ちを切らせばボールが落ちる。
点数は一進一退。
22対24烏野のマッチポイント。
ラストの1点すら決められずに何がエースだと、自分の心を奮い立たせる。
自分の手のひらから放たれるスパイク、渾身だと思っても止められる。それでも何度でも、何度でも打つ。トスが上がる限り。
「もう1本!!」
『もう1本!!』
試合前の言葉通り、西谷は本当に何本も背中を守ってくれた。
もうダメだと思ったボールすら、足を使ってまで下に落とすまいとボールを上げてくれた。
エースを信頼して掛けてくれる声が聞こえる。
打て
打て
何度壁にぶち当たろうとも
トスが上がる限り!!!
『もう1回!!』
あぁ、ちゃんの声が聞こえる。
もう何度も連続してスパイクを打っている、立て続けに1人で打ち続けるのはツラい。
でも、聞こえた彼女のたったその一言で、俺はまた飛べる。
「っ決まるまでだ!!」
体育館の中、まるでそこだけ音が静まり返ったような錯覚をおこす。天井から当たる照明に照らされた、ふわっと影山が上げたネットから少し離れた高めのトス。
「行け!旭!行け!!!」
「ぶち抜け旭!!」
耳に届く、スガと大地の声。
踏み切った時の、キュッという地を踏み締める音が聞こえる。
高く飛び上がったその先、ブロックは2枚。
手のひらに感じるボールの感触。
ボールが手から離れたその瞬間、鉄壁がギィッという音を立てて開いた音を聞いた。
ボールはネットをツツッと伝い、トンっという小さな音を立てて相手のコートに落ちた。
「オォオオオオオオオ!!!!」
響く笛の音。
烏野高校が、伊達工業に勝利した瞬間だった。