第22章 インターハイ予選 対伊達工業戦
side
足の上で、祈るように握った手のひらが少し痛い。
強く握りこんだ手に、お互いの指がぐっとくい込んでいるのが分かる。
それでも、お願い落ちないでと、そう思いながら見つめるその視線の先の光景にいつもなかなか心穏やかにはいられないのだ。
伊達工業戦開始早々から、やっぱり日向くんへと意識が向いているのは分かっていた。
あぁ良かったと。これで少しでもアサヒ先輩も田中先輩もスパイクが打ちやすくなるだろうかとコートを見つめる。
皆がコートに入ってしまえば、自分の出来ることなんて知れている。ただ相手校を観察して、観察して、どんなプレイスタイルなのか見極めて、どこかに綻びはないかと必死に探す。
動画で見た通り、伊達工業のブロックは凄かった。
徹底的なリードブロック。セッターがトスを上げてから動くそのブロックはなかなか囮には捕まらない堅実なブロックだ。
素人がそのブロックをしてもボールには追いつけないけれど、訓練されているリードブロックは本当に恐ろしい。
ずっと見てきたクロちゃんはまさしくこのリードブロックを使っているプレイヤーだ。派手さはないけれど、試合が進めば進むほどリードブロックは真価を発揮していくブロックだと思っている。
クロちゃんはよく、リードブロックは最後に笑うブロックだと言っていた。最初はその意味が良く分からなかったけれど、今はそれがよくわかる。
囮には引っかからず、ボールに必ず追いついてくるということは、それだけでセッターや他の選手へのプレッシャーになる。
その小さなプレッシャーも、点数を追うごとに積み重なって大きな重みへと変わるのだ。
アサヒ先輩が前回伊達工業と試合をした時、どんな気持ちだったのだろうか。
伊達工業は、やはり強豪として注目されていたようで。ネットにアップされた動画の中には伊達工業と烏野の試合も少し載っていた。
少し見ただけでもわかった。皆がエースを頼り、頼られたエースも期待に応えようとスパイクを打つ。けれど伊達工業の鉄壁は分厚く高く。
何度も何度も止められて、それでも苦しい展開でエースに集まるボール、決まらない得点。責任感の強いアサヒ先輩は、どんな気持ちだったのだろうか。
バレーから離れる決断を下す程には、苦しい思いをしたのだ。