第21章 インターハイ予選 対常波戦
頬を赤くした女子に囲まれた及川さんのこれまた大きな背中。
及川さんよりも大分と手前で止まった岩泉さんに合わせて私も後ろで大人しく止まる。
すると、岩泉さんはゴソゴソと鞄を開けると中からバレーボールが出てきた。
バレーボールが鞄から出てきたことにも驚いたけれど、そのボールを何の躊躇いもなく及川さんに向かって投げた時にはもっとビックリした。
そして、及川さんの後頭部に綺麗に当たったことにはもっともっとビックリした。
「痛ーー!!!…ってちゃん!?何で!?」
頭を押さえて振り返った及川さんと目が合った。
コロコロと表情が変わる及川さん。
こういうところも、彼がもてる一因だろうか。
『お、お邪魔してしまったみたいで、本当にごめんなさい。』
どんどんと去って行ってしまった女の子たちを視界に捉えながら、邪魔をしてしまって申し訳ないと後悔が押し寄せる。
あの女の子たちは、もっと及川さんと喋りたかっただろうに、私のせいで会話が終わってしまった。
「じゃ、邪魔!?ちゃんが邪魔な訳ないじゃん!っあー岩ちゃん!!なんで!!」
「あぁ?何のことだよクソ川。」
「っう!だって!あーー!もー!」
練習試合の時と変わらない中の良さそうな様子にふふっと笑いがこぼれる。
それを聞かれて、2人が一斉にこちらを見て固まるので、こちらも固まってしまった。
『あ、あの。及川さん、この前はありがとうございました。』
「へ?あ、あー。うん。全然!!」
「さっきから、何だお前ら。なんかあったんか?」
「はぁーーーん?岩ちゃんには内緒ですぅー。」
「あぁ?てめぇクソ川!」
『ふふっ、及川さんに少しお世話になっただけです。』
ふと、時計に目をやるとそろそろ5分が過ぎようとしていた。
試合が近いのだから、ドリンクの準備をしないと。
『っすみません、そろそろ私行かないと。岩泉さん達、試合見に早くいらっしゃったんですよね?烏野、強くなりましたから、驚きますよきっと。では、失礼します。』
「おー。二階席から見てる。」
「またねーちゃん。気を付けてね!」
いそいそと去る私に、手を振ってくれる2人に嬉しい気持ちになりながら、給湯室までの道を急いだ。