第21章 インターハイ予選 対常波戦
階段を抜けた先、すぐに抜けた大きなホールではまだ入り口から続々と選手たちが入ってくるのが見える。
行き交う人たちの間を通り抜けて、反対側に抜けようと身構えた時だった。
入り口から入ってくる見覚えのあるジャージと顔に、思わず顔が緩んだ。
駆け寄ってみると、あちらの1人がこちらに気付いたようで、サッと手を上げて笑ってくれた。
『岩泉さんっ。』
「よー、烏野の敏腕マネージャー。」
『びっびんわ。っですっ。』
「はっは!わりーわりー。ちゃんと覚えてる。」
『花巻さんも、松川さんもおはようございます。金田一さん、国見さんも、おはようございます。』
集まっている面々に順番に挨拶をすると、皆口々に挨拶を返してくれた。
1度会ったことがあるだけだし、忘れられてしまっていたらどうしようと思ったけれど、そんなことがなかったようで良かった。
周りを見渡して、一番賑やかな人がいないことにすぐ気付く。
『あれ?そういえば、及川さんがいないですね。』
「ブフッ、そういえば、だとよ。うちの学校見て、まず及川探さねーのさすがだな。ザマーミロ、クソ川。」
岩泉さんは大きな声で笑うと、私の頭をポンポン撫でた。
『岩泉さん?』
「あいつな、外で他校の女子に捕まってんだよ。」
『ふわぁ、そうなんですね。…及川さん、とってもお優しいですし、やっぱりもてるんですねー。』
「今から呼びに行くけど、着いてくるか?」
『へっ?あ、どうしましょう。』
アップが始まるまでは、ドリンクの準備をするだけならばまだ少し余裕がありそうだし、この前のお礼も是非及川さんにしたいところだ。
5分程度で戻れれば問題ないだろうか、と時計を見て考える。
『えっと、少しお礼をしたいこともあるので、よろしくお願いします。』
「おう。」
歩き出した岩泉さんの後をついて歩く。
岩泉さんは背の高いメンバーの多い青葉城西では大きさが目立たないけれど、一般的な男性としては十分に大きな体格をしている。
そんな彼の背中はとっても大きい。
そんな大きな背中を追いかけているとあっという間に外に出て、入り口のすぐ側から女子の黄色い歓声が聞こえてくる。
背中越しに覗いてみると、及川さんが女子に囲まれている。