第21章 インターハイ予選 対常波戦
”落ちた強豪”
”飛べない烏”
聞こえてくるその声に、胸が痛くなる。
「ちゃんちゃん。こわーい顔してるよ。」
いつの間にかすぐ側にいたスガ先輩に、眉間をちょんちょんとつつかれた。
いつの間にか、眉間に皺が寄っていたみたいだ。
いけないいけない。
眉間に寄っている皺を、自分の人差し指で伸ばしてみた。
「ちゃんのそんな顔初めて見た。ほらほら気にしなーい気にしなーい。俺達が飛べない烏じゃないってこと、後で見せてやんべ。」
そう言って、何の曇りも無い顔で笑うスガ先輩。
『はい。』
きっと、数年前の烏野はとてつもなく強かったんだろう。
春高にも出場したのだと聞いている。
だからこそ、こうして視線が集まってしまうのだろう。
こんなことは気にしても仕方が無いとわかってはいるけれど、やっぱり耳に入れば心穏やかにはいられない。
蛍にポンポンと頭を撫でられている。
きっと私を宥めてくれているんだ。
私のこんな気持ちひとつで、スガ先輩や蛍の手を煩わせたりする事があってはいけない。
ふぅーと1度深呼吸をして心を落ち着けると、私は体育館までの道のりを歩いた。
体育館に着いて、荷物を置いた後、観覧席に応援幕を設置しに行く武田先生と潔子先輩に着いて行って私も今後の為にビデオを設置する。
操作はばっちり潔子先輩にお願い済だ。
このビデオで、今後の対策もバッチリ立てなくてはいけない。
他に準備のある武田先生と、荷物番を任されてくれた潔子先輩とは別れて、私も皆の為にドリンクを作りに行く。
沢山の選手とすれ違いながら、ギャラリーを歩いて下の階へ向かう。
もうそろそろ女子の試合も終わってくる。
予選とはいえ応援も佳境に入っていて盛り上がりを見せているのがわかる。
女子の試合が終われば、すぐに男子の試合が始まる。
それが終われば、すぐに烏野のアップも始まる。
本当に、もう少しだ。
入学して、合宿もあって。
まだ新しい烏野というチームは始まったばかりだけれど。
皆が噂するようなチームなんかじゃない。
何となく気が急いてしまって、それが体に表れてしまったのか小走りになりながら給水所へと向かった。
籠の中で空のボトルがカラカラと音をたてた。