第21章 インターハイ予選 対常波戦
澄んだ空は何処までも青く遠く。
新緑の季節が運ぶ風は、優しく頬と髪をさらっていく。
6月2日
仙台市体育館
バレーボール競技 宮城県予選 1日目が始まる。
朝早くに学校に集合して、バスに揺られること数十分。
着いた先は、今日予選が開始される体育館。
今日は女子の試合が数試合と、あとは男子のA、Bブロックの試合が行われる。
ちなみに烏野は、伊達工業と青葉城西高校もいる激戦区のAブロック。女子の試合が終わり次第、すぐに試合が始まる。
ドキドキと鳴る心臓を抑えながらバスから降りると、ガヤガヤとした喧騒。色とりどりのジャージを来た人達。
こういう光景を見ると、いよいよだと思い知らされる。
いつも通り蛍と山口くんにくっついて歩きながら、今日の朝のことを思い出す。
西谷先輩と田中先輩によって作られたTシャツを、もちろん今日も着てきたのだけれど、家の前で待っていてくれた蛍がTシャツを見るなりシャッと音を立ててジッパーを極限まで上に上げた。
「っキミさ、本当っ、律儀なのは分かってるけどさ。あー、···取り敢えず、絶っっ対に今日はジッパーこのまま下げないで。」
不満に思う私を他所に、絶対にジッパーをさげないと約束させられてしまった。
そんないつもと変わらない蛍に、なんだかドキドキしていた心臓はすっかり落ち着いて。
こうして会場に着いた今も、あまり緊張せずいつも通りで居られている。
もしかすると、昨日蛍と一緒に過ごしたことも大きかったのかもしれないとも思う。昨日のホットミルクは本当にとっても美味しかった。
会場に入ると更に沢山の人、人、人。
張り出されたトーナメント表の周りにも人が集まっているのが見える。
初めて参加する宮城県でのインターハイ予選。知らない選手ばかりだけれど、この中にもきっとすごい選手が沢山いるんだろう。そう思うとワクワクが止まらない。
『山口くん、なんか皆強そうに見えちゃうね。試合見るの楽しみ。』
「た、楽しみっ?俺は緊張でどうにかなりそうだよ。」
オドオドと周りを見ている山口くんの視線を追って私も周りを見回してみると、黒いジャージが目立つのか、気付くと周りの選手達が烏野の事をコソコソと話しているのが耳に入る。