• テキストサイズ

Gerbera~原作沿い長編~【ハイキュー】

第20章 インターハイ予選前日譚



side 月島 蛍






隣の家の窓辺にそっと佇んでいた人影を、とっさに手招きしてしまったのは帰り道の様子がどこかおかしかったと心配だったからか、それともただ僕が同じ時を過ごしたかったからか。
どちらかなんて、もう正直どうでもいい。


濡れた髪が、頬に張り付いている。その相変わらずの無防備な姿。
こんなにもの世話をやきたくなるのはどうしてだろう。
他人の髪を乾かすなんて、今までの僕なら絶対に有り得ない。
でも、彼女の為なら喜んでやってあげようと、そう思うんだ。


僕の膝の間に座る、小さくて細い体。

ユラユラと揺れたの足に合わせて体も少し揺れている。
初めは強ばっていた体も、すぐに力を抜いて今はリラックスしているのが空気でわかる。


ドライヤーとタオルで両手が塞がっていて良かったと思う。
目の前のその小さな体を、今にも抱きしめて閉じ込めてしまいそうになるから。


の長くてふわふわとした髪は、勿論自分の髪を乾かすよりも何倍も時間が掛かって。

これを毎日しているのか、大変だなと思う反面、そのお陰でこうして長い間の髪に触れていられるんだしなと思うとその彼女の髪に感謝したくなった。


その時間も、心地良いと思えば思う程あっと言う間に終わってしまった。
終わりだと、そう告げるとこちらを見上げてくる蜂蜜みたいな色の綺麗な瞳。僕の言葉に素直に帰ってくる返事が何だか可愛くて。
ミルクティーみたいな色の髪に、蜂蜜色の瞳だなんてちょっと美味しそう。なんて、余計な事を考えて煩くなる心臓を何とか宥めてみようとしたのに、更に心臓は煩くなって。


どうしても収まりがつかなくなって、に待っててと声を掛けて立ち上がる。


まだもう少し、一緒にいたい。



ドライヤーを片付けて、ホットミルクでも入れてみようかと思いつく。ホットミルクって、確か安眠効果とかあった気がするし、この時間に飲むには丁度いいデショ。それに、貰ったお守りのお礼、とか。なんて言い訳まで考えてみる。


甘い物が好きな彼女は、きっと彼女の瞳のような蜂蜜を沢山入れてみたら喜ぶだろう。
リビングに背中を向けて座るの背中に頬が緩むのを感じながら、それも悪くないとそのままに僕はキッチンにあるマグカップに手を伸ばした。



/ 224ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp